キユーピーが業界の少量志向に反しドレッシングを「増量」した理由:「少子高齢化で消費減」という常識に挑む(1/3 ページ)
キユーピーが主力ドレッシングのうち150ミリリットルのボトルを増量。少量こそ利便性が高いとする業界の常識に反するが家庭への精密な調査でサラダの消費が増えていると判断した。
キユーピーは8月、ドレッシングの主力商品のうち最も小さい150ミリリットル入りボトルを180ミリリットルに増量した。たったの30ミリリットルの増量だが、調味料業界ではちょっと異例の変更だ。
他社のドレッシングは少量に
同社は主力ドレッシングについてこれまで一貫して減量を進めていた。他メーカーでも日清オイリオが17年春に主力の「日清ドレッシングダイエット」の200ミリリットルを185ミリリットルに、理研ビタミンも18年2月に「リケンのノンオイル セレクティ」の200ミリリットルを150ミリリットルに変更している。調味料業界では核家族や単身家庭の増加、少子高齢化から1家庭で使われる量が減少傾向にあり、少量の方が使い勝手が良いと考えられてきたからだ。
キユーピーはドレッシングの容量に比例する形で値段も変更しており、価格改定が今回のマイナーチェンジの狙いではない。トップメーカーである同社が業界の常識に逆行して増量を選択したのはなぜか。
今回キユーピーが容量を変更したのは「キユーピー ドレッシング」シリーズ。「深煎りごま」など11種類の味を展開する。キユーピーの調味料の売上高は業務用を含めて約1500億円に上るが、この商品だけでその約4分の1を占める。
2000年に同シリーズを発売した際には200ミリリットルと380ミリリットルだったのが、09年春には200ミリリットルの方を170ミリリットルに変更。14年春にはさらに150ミリリットルに減らし、260ミリリットルの商品を追加した。
小型ボトルを一貫して少量化してきた同社だが、今回は150ミリリットルを180ミリリットルに逆に増量。260ミリリットルはやめ、代わりに8ミリリットル入りのスティックを6本そろえた袋タイプも発売した。ほかにも容器の材質を瓶からプラスチックにするなどの変更も行った。
同社でドレッシングの開発を主導する林孝昌さんは「今回の変更はユーザーの使いやすさ改善を追求した結果」と説明する。同社のドレッシングの主要購買層は60〜70代。確かに小分けにすることで少量ずつ使えるスティックタイプは一度に大量にドレッシングを使わない高齢者のニーズにうまく対応している。プラスチックの容器も瓶より軽く持ちやすい。
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