キユーピーが業界の少量志向に反しドレッシングを「増量」した理由:「少子高齢化で消費減」という常識に挑む(2/3 ページ)
キユーピーが主力ドレッシングのうち150ミリリットルのボトルを増量。少量こそ利便性が高いとする業界の常識に反するが家庭への精密な調査でサラダの消費が増えていると判断した。
消費者からは「すぐ使い切ってしまう」
しかし増量だけは一見、調味料業界のトレンドに反しているようにみえる。競合するドレッシング大手の担当者も「1家庭あたりの人数が減っていることもあり、調味料の容量を減らすのが最近の業界の流れなのに……」と訝しむ。林さんも「(変更を知った)社内から『時代に逆行しているんじゃないか』『ずっと減らしてきたのになぜ量をアップさせたのか』と声が上がった」と振り返る。
これまでキユーピーがドレッシングの容量を減らす根拠となってきたのが、大手調査会社による消費者アンケートだ。モニターの家庭に、1カ月間でサラダが食卓に出る回数と、1世帯当たりの食事1回でのドレッシングの使用量をオンライン調査で聞いている。それらを掛け合わせることで、1家庭が1カ月に使うドレッシングの量を推計してきた。
キユーピーでは家庭で開封したドレッシングを1カ月以内に使い切ってもらうのが望ましいと考えている。これまでは1カ月当たりの1家庭の消費量の推計が既存のボトルの容量を下回ることから「家庭ではうちの商品を使い切れていない」と判断、減量に踏み切ってきた。ここ最近も、消費量の推計値は150ミリリットルを下回っていた。
一方で数年前からドレッシングの容器を全面的にリニューアルするプロジェクトが社内で立ち上がっていた。瓶をプラスチックに変えるといった動きが進む中、15年ごろ浮上したのがこれまで疑問を持たれてこなかった容量の問題だった。
林さんによると、調査に基づく推計値とは裏腹に消費者からは「ドレッシングを1本すぐ使い切ってしまう」「わざとドバドバ出るようにして早く買わせる戦術なのでは」などと、容量の少なさに関する苦情の電話がよく来ていたという。しかもその大半は1回の使用量が少ないと思われていた高齢者からだった。
果たしてドレッシングの使用量は減っているのか。従来の調査は食生活全般を対象にしたものでドレッシングに特化しておらず、実際にどのように食卓で使われているのか分かりづらかった。そこで林さんらは正確な消費の実態に迫るべく、より精密な“家庭のサラダ調査”に踏み切った。
16年と17年に1回ずつ、それぞれ別の30〜60代の約100世帯を対象に調査会社にアンケートを依頼した。食卓に登場したサラダに入っている具材や量、かけているドレッシングの種類に1回に使う容量までメールで回答してもらい、実際に食べたサラダの写真も添付させた。
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