キユーピーが業界の少量志向に反しドレッシングを「増量」した理由:「少子高齢化で消費減」という常識に挑む(3/3 ページ)
キユーピーが主力ドレッシングのうち150ミリリットルのボトルを増量。少量こそ利便性が高いとする業界の常識に反するが家庭への精密な調査でサラダの消費が増えていると判断した。
サラダ人気でドレッシングも消費増か
浮かび上がったのは、林さんが想像していた以上にサラダが食卓で食べられ、そして多様化している現状だった。「かつて家庭の食卓ではサラダを小鉢に分けて出す傾向にあった。今回の調査結果では大皿のサラダボウルにいろいろな食材を混ぜて出す家庭が多かった。サラダが大皿化すれば自然と使う調味料の量は増える」(林さん)。時短志向から後片付けをおっくうがって小鉢より大皿を使っているのでは、とみる。
さらに、サラダ自体が手の込んだものになっているとも林さんは指摘する。米国発とされる人気料理「チョップドサラダ」がその典型で、多様な食材を細かく刻んで混ぜ合わせる。アボカドやオリーブオイルも頻繁に使われていた。「葉野菜にドレッシングを単に掛けるというより、サラダ自体が手の込んだおかずとして楽しまれている」(林さん)。調査の結果、ドレッシングの主な使い方であるサラダの消費自体、増加傾向にあると推測された。
この調査で判明した1家庭で1回の食事に使うドレッシングの量と、従来の調査に基づく月当たりの使用回数を掛け合わせた結果、新たにはじき出された1家庭の1カ月のドレッシング消費量の推計が今回の180ミリリットルだった。実際に寄せられていた「1カ月を待たずにドレッシングを使い切ってしまう」という声が、家庭へのより緻密な調査で証明されたことになる。
「今回の試みは明らかに市場の流れとは逆張り。商品リニューアルの発表前は『本当に受け入れられるのか』と自分自身もドキドキしていた」と振り返る林さん。ふたを開けると、新容器の移行期に当たる8月の売り上げは前年同月比で12%増と好調なスタートを切った。林さんは「他のドレッシングでも増量を検討している」と語る。
トップブランドとはいえ、業界の流れに逆行したキユーピーのドレッシングの増量を他の調味料メーカーが追随するかは未知数だ。「少子高齢化や単身家庭の増加で消費量が減っている」という調味料業界の「常識」にあえて疑問を投げかけた同社の新施策が、新たなスタンダードとなるか注目される。
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