「バカマツタケ」、バカにできない本物並みの味 人工栽培に成功:香りならマツタケ超え!?(2/3 ページ)
多木化学がマツタケの近縁のキノコ「バカマツタケ」の完全人工栽培に成功したと発表。味や香りは本物と同格かそれ以上。生きた木と共生して育成するメカニズムを解明した。
キノコ育成に必要な「刺激」の条件解明
実は、バカマツタケを巡っては奈良県森林技術センターも2月に人工栽培に成功したと発表している。ただ、こちらは人工的に培養した菌をブナ科の林に植えて増殖させたケース。秋津さんによると、多木化学が開発した技術はあくまで生きた植物を使わず人工的な環境下で発生させているため「完全」人工栽培としている。
同社は約6年前に開発をスタートした。秋津さんによると、キノコを人工栽培するためには胞子から発芽した菌糸の塊である「菌糸体」を作り、そこからキノコの“赤ちゃん”に当たる「原基」を形成する。原基がようやく、普段口にする傘を持つキノコ(子実体)に成長する。キノコの“途中段階”では本来の味や香り、食感は望めないのだという。
研究の比較的序盤で、バカマツタケの原基を人工的に発生させるところまでは成功した。ただ、難航したのが原基からキノコの形を形成する過程の再現だった。
秋津さんによると、原基がキノコになるには変化を促す特定の“刺激”が必要となる。秋に多くのキノコが生えるのは気温の低下が条件だからで、雷も育成を刺激しているという研究事例もある。シイタケは水気があると生えてくる。こうした育成に必要な刺激条件は種類によってバラバラで、複数の条件を組み合わせる必要もある。
シイタケなど現在栽培方法が確立しているキノコの多くは「腐朽菌」に分類され、腐った木に菌を植え付けて発生する。培養する条件を整えやすく栽培が容易なことから、比較的安価に流通しているという。
ただ、バカマツタケはあくまで生きている木から栄養をもらい成長する菌根菌の一種。秋津さんによると、人工的な環境で育成するには野生で共生している植物とどのようなやりとりをしているか突き止めないと、発生に必要な条件が導き出せないという。
ちなみにトリュフやポルチーニといった海外産キノコも生きた木と共生するタイプ。やはり完全な人工栽培方法が確立していないことから高級品として珍重されているという。秋津さんによると、菌根菌でも例外的にホンシメジは人工栽培が確立している。
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