エロ漫画の「研究本」はなぜ有害図書にされたのか 「わいせつ」の意味を問う:「エロマンガ表現史」著者に直撃(3/4 ページ)
エロ漫画の表現の研究本「エロマンガ表現史」が有害図書に指定された。著者は「有害とは何か」について議論が行われてこなかったと指摘する。
「エロ漫画と一般向け漫画は地続き」
――ネット上では未成年でも性的なコンテンツを簡単にみられるのが現実です
稀見:僕は青少年に対してネット上で18禁のコンテンツを見ているか聞きまわって調査していますが、みんな「見ている」と回答します。本当に青少年は守られているのか。そして書籍だけ規制して意味があるのか。
昔からある条例を今の時代に合ったものに書き換えようとか、青少年をどう守るのかといった議論が足りないのです。僕は「けしからん」と言っているわけではないのです。意識が変わってわいせつの概念も変わっているのに、システムは変わっていません。賛成派も反対派も議論してほしい。
――そもそも「エロ」は多くの人が親しんできたにもかかわらず、大っぴらには議論されにくいジャンルです
稀見:エロ漫画とは腫れ物に触るような感覚で避けられてきたメディアです。テレビ番組で漫画が特集されてもエロ漫画は出てきません。クレームが来るのを予想したりスポンサーに配慮するのでしょう。Twitterを見ていても、この本を買う理由を「好きだから」ではなく「研究のために」とオブラートに包んでいるつぶやきを目にします。
ただ、「エロス」とか「ルネサンス」という言葉になると(世間で議論するのは)OKになる。ネットでも江戸時代の春画はOK、エロ漫画はダメという反応を見ます。でも、江戸時代に春画は「エロ」だったわけです。頭の中でみんな、「エロ」と「エロス」を分けています。
――一方で本書では、手塚治虫や少年ジャンプの作品など一般向け漫画も、性的な表現を語る上で数多く引用されています。実際、一般向けの作品で「エロ」を感じることだって十分ありますよね
稀見: エロいかエロくないかは、デジタル的なゼロ・イチでは分けられません。段階があるのです。しかし、成人コミックに付けられるマークなどで、こっちからエロだと無理やり線引きしている。業界側の自主規制で(18禁がどうかを)2分しなくてはいけないからです。
しかし、エロ漫画と(一般向け)漫画は地続きです。簡単に分けられるわけじゃない。少年漫画にも少女漫画にもエロい部分は必ずあります。「あの(少年誌掲載の)漫画はエロマンガだ」といった議論もよくありますが、たいてい定まらない。根拠が「俺が興奮したから」だからです。不定形な物を扱い議論しているという前提に立たず、「俺の定義」を前提に議論するからみんな話がかみ合わないのだと思います。
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