エロ漫画の「研究本」はなぜ有害図書にされたのか 「わいせつ」の意味を問う:「エロマンガ表現史」著者に直撃(2/4 ページ)
エロ漫画の表現の研究本「エロマンガ表現史」が有害図書に指定された。著者は「有害とは何か」について議論が行われてこなかったと指摘する。
「有害さ」は客観的に判断されたのか
――ほかにも「巨乳」という言葉は実は80年代からよく使われるようになったことなど、大量の資料や漫画家へのインタビューから分析しています。研究書として書かれた一般向けの本書が有害図書の指定を受けたと聞いてどう思いましたか
稀見:性的な本を出す際は(有害図書指定は)100%ないとは限りません。でも(事前に可能性は)限りなく少ないだろうなとは思っていました。17年11月に出版したのに(だいぶたった)18年3月に指定を受けたので、まず「なぜ今なの?」と感じましたね。
書いた本人は有害ではないと思って書いている。でも、向こう(北海道)の主張がないので反論しようにもその「論」がないのです。18禁マークの付いた本(の画像)も載っているので有害になった、という以上は分からない。議事録の情報開示を求めても内容は記録されていなかったです。
――「エロ漫画の性的なシーンが載っているから青少年に見せるべきでない」という意見もあるとは思いますが、どう考えますか?
稀見:有害だと思う人がいるのは想像できるし分かるのです。ただ、その人たちが「自分にとって有害」と思うのは良いけれど、「みんなにとって有害」と思い込んでそうなのが、おかしい。青少年にとって有害だと客観的に判断しているかは非常に疑問です。
これは「終わらない戦い」だと思います。時代とともに人の感性は変化していく。登場した表現をけしからんと思う人も、大丈夫だと考える人も出てきます。どちらが勝つということはないと思います。ただ、青少年に有害かどうかという、出版社の流通や作家の仕事にも影響するレベルの判断を行政が行うには、単なる言い合いでなく客観性を持たせてほしい。
有害な本と言う物はあるとは思います。でも、(エロ系のコンテンツが)禁止されることで青少年が本当に救われるかという検証はなされていない。
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