旅をするような多拠点生活で「働く」はどう変わった?:ホステル「泊まり放題」の仕掛け人を直撃(4/5 ページ)
「ホステルパス」という新サービスが話題になっています。月1万5000円から登録している全国のホステルに泊まり放題になるというもの。東京〜地方、地方〜地方の多拠点生活が実現できるのです。この仕掛け人である「Little Japan」の柚木理雄さんを直撃しました。
多拠点生活が人をユニークに育て、やがては日本の活力に
――それにしても、柚木さんは元々農水省にお勤めだったわけですよね。省庁のお堅いイメージと今の自由な価値観とがどうしても結び付かないのですけど、エリートだった柚木さんがそこを去り、NPOを立ち上げ、今の活動をしている原動力はどこにあるのでしょう?
学生時代にバックパッカーとして世界を回ったり、ゲストハウスで働いていたりと、今につながる話はそれこそたくさんあるんですけど、大元までさかのぼると、それは小学生時代の体験からきているかもしれません。小学校3年までの3年間、僕はブラジルに住んでいて、そこから日本に帰ってきた時、すごく窮屈な感じがあったんですよ。
「何年生は跳び箱は何段までしか飛んじゃいけない」とか、「絵を描く時には下書きしてからじゃないといけない」とか。周囲と同じことをしないといけない、同じものを作らなくちゃいけないという圧力を強く感じたんです。それがすごく嫌だったんですよね。まあそういう僕もだんだんとその圧力に屈して染まっていくんですけど(苦笑)。
その「同じことで、窮屈」というのは大人になってからますます感じるようになりました。農水省で地方に行く機会は多かったし、今はいろいろな場所を移動する生活をしていますから、「日本のどこが一番面白かったですか?」とよく聞かれるのです。でも、そういうとき、僕は決まってこう答えるんですよ。「どこも同じで、つまらない」って。
NPOの活動も、今やっていることも、根底にはそんな「どこも同じで、つまらない」日本をどうにかして変えたいという思いがあります。NPOはまだ農水省にいた時にパラレルキャリアとして立ち上げたんですけど、それは、全国にたくさんある空き家を活用することで、各地方で特徴的なまちづくりをやっていきたいと考えていたからでした。
今回の「ホステルパス」も、その延長線上にあって、地方に行く人を増やしたいと思って始めたんです。なにも限界集落をどうにかしようとかってことではありません。特徴的な場所を作っていくことを考えたら、東京より地方のほうがやりやすい。でも、そのためには人がもっと地方に行くようにならなければならない。
とはいえ、移住となるとハードルが高い。だったらゲストハウスを利用した多拠点居住はどうか、という発想なのです。東京の郊外に住む人だって、通勤時間を減らして仕事を効率化することで週4日勤務にして、残りの時間を住んでいる地域での活動に充てる、そんなことだってできるかもしれません。
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