旅をするような多拠点生活で「働く」はどう変わった?:ホステル「泊まり放題」の仕掛け人を直撃(3/5 ページ)
「ホステルパス」という新サービスが話題になっています。月1万5000円から登録している全国のホステルに泊まり放題になるというもの。東京〜地方、地方〜地方の多拠点生活が実現できるのです。この仕掛け人である「Little Japan」の柚木理雄さんを直撃しました。
気持ち良く働くって、思っているよりも大事なことなのでは?
――柚木さんご自身はいつごろから今のような暮らし方に?
ちょうど1年くらい前からです。農水省を辞めたのが17年1月。2月に会社を作って、ゲストハウスを始めたのが5月。しばらくはここの運営につきっきりだったんですけど、その後スタッフを増やして体制ができてきたので、それからですね。地方では、半分は友達の家、残りの半分はホステルやゲストハウスに泊まっています。
――そういう暮らし方を始めて何が変わりましたか? 特に「働く」ということに何がもたらされたのか、お聞きしたいです。
まず一つ言えるのは、いろんな場所に行くだけで新しい出会い、新しいつながりが生まれることですね。ゲストハウスは特にそうですけど。そうした出会いが新しいビジネスのチャンスになることもあるので、それは仕事に間違いなくプラスです。
また、自分の場合はずっと同じ場所に居続けると怠けてしまうというか、集中しきれないので、いろいろと場所を変えるとそれだけで作業効率が上がるのも実感しています。
さらにもう一つあるとすれば、単純に気持ち良く働けるということです。今年の夏は東北に行って過ごしたのですが、涼しいし、めちゃくちゃ気持ちがいい。冷房がいらないから電気代の節約にもなるし、環境にだっていいじゃないですか。
僕は寒いのが苦手なので、逆に冬の間は暖かい地方で仕事をします。単純ですが、そうやって気持ち良く働くのは、案外大事なことだと思うのですよね。
――分かります。実は僕自身も花粉のひどい季節には台湾に避難して仕事をしていたので。
ああ、確かに、花粉のせいで生産性が下がっている企業って結構ありそうですよね。そうやっていい環境を選んで仕事をするのは、効率も上がるし、自分自身にとってもハッピーなんじゃないかと思います。
――けれども、それができる仕事とできない仕事があるのでは?
確かに、現状だとPCがあればできる仕事かどうか、会社がそれを認めてくれるかどうかによる部分は大きいんだろうと思います。
けれども、例えば農業だって、季節労働的な側面があるから、作物の収穫の時期に合わせていろいろな場所を移っていく、というやり方はありかもしれない。
あるいは、介護とか看護師みたいな医療系の仕事にしたって、どこに行っても人手が不足しているわけだから、やり方次第では可能ではないかと思うんです。1日、2日で転々とするのとは違うかもしれないけれど、数カ月単位で場所を変えたとしてもパフォーマンスは出せる仕事なのではないか、と。
だけど多くの人は、こういうのは一部の人にしかできない生き方で、自分には関係ないと思っていますよね。それは恐らく住む場所や生き方を決める際に、仕事があるからとか、家族がいるからとか、「●●があるからできない」という発想をしているからだと思うんです。
そういう制限をすべて取っ払ったときに、自分が本当に実現したい生き方は何なのか、本当に住みたい環境とは何なのかと、一度考えてみたらいいと思うんですよ。「そんなもの何もない」という人には難しいかもしれないですけど、何かしら、実現したい生き方がある人のための選択肢を作りたい。そう思って、僕は今頑張っています。
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