日本女性の胸「苦しめない」高級下着を 女性起業家、裸一貫からの挑戦:幾度の転職・挫折にも負けず(3/3 ページ)
高級ランジェリーにある女性起業家が参入。大手が寡占する業界を「日本女性向け」のコンセプトで切り開き、高級百貨店での販売にこぎつけた。
最初から高級百貨店での販売狙う
本格的に下着を作り始めた栗原さんだったが、まず生産してくれる工場のつてが無かった。ネットで下請け業者を探して電話したが次々に断られる。明らかに金額を吹っ掛けてくる会社もあった。とある生地メーカーには「その程度のロット(数量)では取引できない」とあしらわれた。
ようやく見つけた神戸の会社に資料を持ち込んだところ「今まで(似たような下着生産を依頼に)来た子はみんなあやふやだった。ここまで明確に『こういうブランドを作りたい』と言ってきた子はいなかった」と評価され、何とか引き受けてもらえることに。
工場探しに奔走する一方で栗原さんがこだわったのが商品の販売先となる小売店。女性向けに商品を売るには、ネット通販やInstagramなどを通じたSNSの活用がいかにも鍵になりそうなものだ。
だが高級ランジェリーについては「小売りのどこで売ってもらえるかが(商品への)信用力になる」(栗原さん)。SNSも今ほど流行ってはいなかった。高級ブランドとしてのイメージを確立するため、最初に本格販売する先は小売りとして最高の「格」を持つ高級百貨店に的を絞っていた。
ブランドデビュー前の13年9月ごろ、西麻布のギャラリーを借りて展示会を開催。コンサル会社などで築き上げた人脈を駆使して約200人を集めた。狙っていた百貨店のバイヤーも5人訪れ、すぐに高評価を得た。
14年春には日本橋高島屋で約3週間のポップアップ(期間限定)出店を果たし、伊勢丹などにも出店した。百貨店を訪れた女性からの口コミが広まり、自社のサロンを訪れる客も増えてきた。
18年9月にはついに日本橋高島屋の下着売り場に常設コーナーが設けられることになった。日本や海外の老舗に交じって新興ブランドが売られることは異例だ。同店のある担当者が「百貨店のランジェリーのラインアップは数社で決まっていた。業界を活性化させるためには別のブランドを成長させる必要がある」と背中を押してくれた。
今は年2回くらい百貨店のポップアップで出店するほか、地方のショップなどで販売会を開く。17年8月からネット通販も手掛けているが「あまりネット販売は稼働していない。実際に試して納得してから買いたいという女性が圧倒的に多い」(栗原さん)。売り上げは毎年2倍くらいのペースで増えており、次の期は年商1億円を目指す。
谷間を作るのが目的でない
ナオランジェリーの下着はブラジャーとショーツのセットで約2万円の価格帯だ。3〜4万円する海外の高級ブランドと、7000〜8000円ほどの日本ブランドとの中間に位置する。「日本ではあまり存在していなかった価格。レースなど素材でうちと同じ品質の商品を海外ブランドが作ったら、1.5倍してもおかしくはない」(栗原さん)と胸を張る。
加えて売りにしているのが日本女性に特化した付け心地だ。「うちのブラジャーは『谷間を作ること』が目的ではない」(栗原さん)。胸元のワイヤーをわざと緩くして本来の胸の形に添わせたことで、締め付けすぎず疲れない着心地にしている。
主要ユーザーは30〜40代で、特に看護師などお金に余裕があるものの就労時間を拘束されがちな女性に人気という。職を転々とし、自らも「飽きっぽい」と語る栗原さん。だがランジェリー作りの夢だけは見失わず、今や胸を張って大手メーカーと渡り合う。
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