働き方改革の中で、私たちは何に向き合うべきか 経営学者・宇田川元一さん:組織論、経営戦略論の研究家に聞く(4/5 ページ)
皆が快適に働ける環境を実現するために、企業はどのような組織づくりを目指していけばよいのだろうか? 組織論、経営戦略論を研究する経営学者の宇田川元一さんに聞いた。
それは質的な問題? それとも量的な問題?
WORK MILL: 働き方改革の中では、各企業が国や自治体の指導の下で「残業時間削減」「有給休暇取得推進」を目指し、具体的な数値目標を設定しているケースが多く見られます。取り組む企業側に主体性がないと、こうした数値目標を達成しても、やはり本質的な問題の解決には至らないのでしょうか。
宇田川: 意味がない……とまでは言い切れませんが、あまり効果的ではないでしょう。これは一元的に「質的な問題」を「量的な問題」に置き換えている、という状況です。
「量的な問題」とは、どこに問いがあるのかが明確な問題です。「1+1は?」と問いが立っているから、答えを量(≒数値)に還元できる。量に還元できる問題は、具体的な方法を用いて達成することができます。
一方で「質的な問題」とは、そもそも問いが何なのかが明確でない問題を意味します。「なんか最近、会社がイケてない」「従業員が働きにくそう」など、ざっくりとした課題感ですね。質的な問題については、まず「問題の原因はどこにあるのか?」「そもそも何のためにこれをやろうとしているのか?」と、自分たちで考える必要があります。
WORK MILL: いま、働き方改革が解決しようとしている組織の課題は、「質的な問題」の方が多いように思えます。
宇田川: 本来なら働き方改革は、各企業が自らの抱えている組織上の課題と真摯(しんし)に向き合い、それぞれ独自に目標を設定していくべきものです。当たり前の話ですが、抱えている問題は企業によって千差万別ですから。
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