20年新卒採用、大企業は好調 中小企業は苦戦の見込み 売り手市場で広がる格差:高卒人材・外国人学生に活路(2/2 ページ)
リクルートワークス研究所が、20年新卒採用の見通しに関する調査結果を発表。採用数を「増やす」と答えた企業は13.8%だった。ただ、計画通りに採用を実行できるかについては、企業の規模によって格差が生まれる可能性もあるという。
女性活躍・初任給の増額で人材確保へ
人材確保に向けて取り組む施策は「女性の比率向上」(56.2%)、「初任給の引き上げ」(49.9%)、「外国籍学生の採用」(24.3%)などが上がった。古屋研究員は「初任給の引き上げ幅の平均値は前年比+0.3%程度と、全体としては多くはない。ただ、IT関係の技能を持つ学生に対して、一部企業が極めて高い初任給を提示するケースが出てきた」と分析する。
優秀な新卒を高待遇で迎えている企業は、メルカリやサイバーエージェントなどがある。DMM.comも19年卒の新卒から一律初任給を撤廃し、能力別とする予定だ。
計画通りに採用を進められない企業も
ただ、こうして「採用数を増やす」との計画を固めても、全ての企業がその通りに遂行できているわけではない。前年の調査では15.8%の企業が採用増を掲げていたが、18年10月1日時点で「計画通りに採用人数を確保できた」と答えた企業は80%にとどまった。残る企業は採用活動を継続したり、通年採用に切り替えたり、「新卒」の定義を広げ、卒業年度に幅を持たせる形で募集をかけたり――といった取り組みを続けているという。
「大企業では、内定を辞退して他社に就職する学生が出ることを想定し、計画を上回るペースで内定を出すのが一般的だが、中小企業では計画を下回る例が多い。『採用を増やす』という目標を掲げる裏で、実は前年の採用失敗を持ち越している企業もある。特に製造業界の中小企業は、『技能を継承させたい』『経営者として育てたい』との観点から、優秀な人材の取り合いが続いており、採用難が顕著になっている」(古屋研究員)
古屋研究員は「中小企業には『新卒で正社員を採る』という手法にこだわらず、30歳以下の人材の中途採用を強化したり、非正規社員を採用したりする例もみられ、手法の多様化が起きている。21年卒以降の予測はまだ不透明だが、少なくとも20年卒の採用はこのトレンドが続くだろう」と話している。
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