ニュース
残業削減に「魔法の杖」は無い 働き方改革がうまくいかないこれだけの理由:「残業学」教授が解き明かす(2/4 ページ)
今の働き方改革は果たして残業削減に効いているのか。欠点と真に効く対策について大規模調査を行った立教大教授に聞いた。
「ワークライフバランス」への誤解
――そこで、数ある施策の中で鍵として強調しているのが、残業時間の「見える化」と「残業代の還元」です。特に後者は、従業員が生活費の一部として当てにしていた残業代を別の形で支払って埋め合わせるという提案で、理にかなっているように思えます。ただ、労働者と経営者の双方がしっかり理解していないと誤解が生まれる気もします。
中原: 残業対策は働く側にも、働かせる側にも働きかけなくてはいけないものです。例えば「ワークライフバランス」という言葉があります。良い理念ですが、その言葉1つだけではうまくいかない。
経営者にワークライフバランスと言うと、「それって(従業員が)仕事しなくなることでは?」と思われがちです。経営者の観点からするとネガティブワードなわけです。一方で現場の管理職が「ワークライフバランス」という言葉を聞くと、「また人事がめんどくさいことを言い始めた」と思うでしょうね。この手の問題は多いです。
残業代の補填という手法も、浮いた残業代の分を誰か(の給与)に加算すればいいといったもので、実はそれほど原資のかかる話ではありません。ただ、経営者にとっては(施策を導入する際に)「ワークライフバランス」などと言われた瞬間、従業員が働かなくなると思ってしまう。感情レベルの誤解がこういった概念の中に含まれているため、今もうまくいっていないのだと思います。
関連記事
- あなたが残業を止められない真の理由 『残業学』教授が斬る
働く日本人と切り離せない残業。その真の理由について立教大教授らが大規模調査した。残業が無くならない複合的要因を明らかに。 - 超売り手市場なのに「事務職志望の女子学生」があぶれる理由
空前の売り手市場の中で7月の女子内定率が減少。銀行などで事務職採用が急減したのが原因。依然として事務職希望の女子大生が多いこともある。 - サイバーエージェントにDMMも 大手ITが新卒の一律初任給を止める理由
企業による新卒の一律初任給廃止が広がっている。サイバーエージェントやDMMなどが導入。能力に応じた金額を提示して優秀なエンジニアを呼び込むためだ。 - 勝手に“天職”を見つけ出す転職AIがすごい
転職活動をしてもいない人にスカウトのメールが届くscoutyが威力を発揮している。ネット上の個人情報を収集、AIが分析して企業とマッチングする。 - 「東大生起業ブーム」の虚実
東大生の間で起業がブーム。専門サークルも人気だがなぜか大企業への就職が大半。起業自体が目的化している側面もある。 - 日本企業で外国人留学生の採用が進まない真の理由
日本企業で外国人留学生の採用が進んでいない。日本独特の就活の慣習に外国人がなじめないほか、企業も高い日本語能力を求めたりネガティブなイメージを持つのが原因。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.