オリオンビール買収の行く末は?:ビール事業の活路探る
オリオンビールが、野村ホールディングスと米投資ファンドのカーライル・グループによる買収を受け入れた。厳しい環境にあるビール事業をどう発展させるのか。新体制の手腕が試されている。
オリオンビールが、野村ホールディングス(HD)と米投資ファンドのカーライル・グループによる買収を受け入れたのは、中核事業である酒類・飲料事業の立て直しや、時代を経て複雑化した株式を集約し、経営の安定化を図る必要性に迫られていたからだ。
経営陣による自社買収(MBO)という選択肢により、「県民のビールというアイデンティティー」の維持が約束されているものの、厳しい環境にあるビール事業をどう発展させるのか。新体制の手腕が試されている。(政経部・島袋晋作)
「大変厳しい業界」
1月23日夕、浦添市のオリオン本社で開かれた記者会見で、與那嶺清社長は「沖縄に根差した企業としてのDNAの維持、何よりも新しい世代の社員が誇りを持てる真の沖縄の代表企業となることを一丸となって目指す」と強調した。
ほかの出席者も「県民にとって宝の企業」(野村キャピタル・パートナーズ)、「一緒に汗をかく」(カーライル)など、沖縄に寄り添いながら事業拡大を目指す姿勢を繰り返し強調した。
だが、新体制が注力するビール事業は、全国的に縮小傾向だ。健康志向の広がりや好みの多様化で国内のビール類出荷は14年連続で過去最低を更新。観光客数や人口が増加している県内でもオリオンの出荷量は減少が続く。
価格の安さで支持されている発泡酒と第三のビールの酒税引き上げも予定される。オリオンが活路を求める海外も収益が上がっておらず、悲観的な要素が山積している。好調な観光を追い風に、将来の可能性のあるホテル事業へ軸足を移すのではないかとの見方が根強く残っている。
カーライルの担当者も「大変厳しい業界」と認めるが、どう立て直していくというのか。会見では営業力やマーケティング戦略、海外販路をあらためて見直し、合理化を進めるべきだとの考えや、豊富な海外ネットワークを披露したが、実績を上げられるかは不透明だ。
オリオンにこれまでにない発想や知恵、スピード感も加わる。與那嶺社長が全役職員に呼び掛ける「自己変革」を実現し、追い風にできるかどうかも注目される。
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