恵方巻きという「伝統」を作ったのは誰か 販促キャンペーンの死角:廃棄問題でゆれる(2/3 ページ)
華々しい宣伝の一方、廃棄問題にも揺れる恵方巻き。本来は大阪の一部の風習にスーパーやコンビニが目を付けキャンペーンで全国区に。
スーパーの販促で全国へ
岩崎さんによると、「節分に巻きずしを食べる風習」が全国化するための“種まき”を担当したのが、大阪にあるすし店やその材料であるノリ、厚焼き玉子の組合だった。1970年代頃から彼らは節分に巻きずしを食べる言われを盛り込んだチラシを大々的に広めるようになったという。ノリの組合は節分の時期にセールを行い、巻きずしの丸かぶり(丸かじり)イベントなどで盛り上げることでマスコミへの露出も強めていった。
次の転機となったのが大手スーパーチェーンによる販促の全国展開だったという。岩崎さんによると、1982年頃にはジャスコ(現イオン)が厚焼き玉子の組合の作ったチラシを店頭に置くようになった。他のスーパーも追随するようになり、新聞にチラシを折り込むなどして巻きずしを節分に食べるようアピールしていった。
岩崎さんは「スーパーとしては他の物も一緒に売るための工夫だった。店側が『節分に巻きずしを食べるのは伝統』と説明することで、知らない人も『昔からやってるんだ』と思うようになった」と説明する。こうして近畿や他の地方にも徐々に販促キャンペーンが広がっていったという。
コンビニが「仕上げ」担う
そして「全国展開の仕上げを担った」と岩崎さんがみるのがコンビニだ。全国チェーンのスーパーより、地方の郡部にも細かく出店している点が大きかったという。80年代から販売が始まったとみられ、少なくとも89年にはセブン‐イレブンが広島県の一部地域で発売した。
セブン&アイ・ホールディングスによると、現地の店のオーナーから「こんな面白い風習がある」と提案があったのがきっかけだった。ちなみにこの時には現在の「恵方巻」という呼称が使われていたという。その後、同社が98年に全国発売するなど、コンビニ業界全体で恵方巻きを全国で展開するようになっていった。
恵方巻きが話題の行事になっていった理由について、岩崎さんは「もともと節分は『悪いものを追い払う』行事。正月のように神様にささげる供物、つまりごちそうが必要なイベントではなかった。そこにうまく巻きずしが入り込んだ」と説明する。
関連記事
- 恵方巻きの大量生産「もうやめに」 発信したスーパーの思いを聞いた
恵方巻きの大量廃棄が問題視される中、兵庫県のスーパー、ヤマダストアーの折り込みチラシが話題に。「もうやめにしよう」と銘打ったメッセージを発信した意図を聞いた。 - チョコミントの「ミント」はなぜあの色? ブームの真相に迫る
チョコミントの「ミント色」は米国のアイスチェーンが開発したもので日本上陸時は売れずその後定着。パンやスイーツに派生した最近のブームはインスタ映えなどSNSで発信するための一時的なものの可能性が高い - コンビニおにぎり、ひそかに“バイリンガル”になった深いワケ
コンビニ各社が訪日客向けにおにぎりのパッケージのデザインを変更している。具材の英語表記やイメージ写真を付けて中身を想像しやすくした。 - 4年ぶり「春のアイス値上げ」の真相
今春にアイス各社が一斉に値上げ。原材料に加え流通費高騰が原因で、特に冷凍品の輸送は労働環境がきつく人手不足が顕著。 - ファミマのサンドイッチ、パンの「耳」に目を付けたら売れた訳
ファミリーマートの食パンの耳を半端に残したサンドイッチが売れている。柔らかめの耳を少し残すことで香ばしさや食感を工夫し、地味な部分で消費者に驚きを与えた商品といえる。 - 10年間宣伝ゼロのマーガリン 売り上げが突如6倍になった真の理由
たらこ入りマーガリンが発売10年目に宣伝無しでメーカーも困惑する謎のヒット。Twitterがきっかけだが背景にはそもそもSNSで興味をひきやすい商品の魅力があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.