アマゾンのベゾスCEO、不倫脅迫騒動があぶり出す「デジタル時代の危うさ」:世界を読み解くニュース・サロン(5/6 ページ)
米ネット通販大手アマゾンのジェフ・ベゾスCEOの離婚、不倫問題に関して、彼が米タブロイド紙から“脅迫”されたと主張し、騒動になっている。この問題から見えるのは、デジタル社会に生きる“危うさ”。それは私たちにとっても人ごとではない。
たくさんの“敵”をつくってきた報道
ただ忘れてはいけないことは、ベゾスが不倫をしていた事実だ。ベゾスは写真やメッセージについてその真偽を争っていないし、不倫を否定していない(ベゾスがサンチェスと不倫関係になる前から夫婦は別居していたとの話もあるが)。ナショナル・エンクワイアラー紙が主張するように、日本でも、ベゾスほどの大物でなかったとしても、影響力のある要人なら週刊誌やワイドショーなどで間違いなく記事になっているだろう。
同紙は過去にも、ニュース価値のある人々について次々とスクープを飛ばしている。これまでもゴルファーのタイガー・ウッズの不倫や、俳優のメル・ギブソンなど数多くのセレブの離婚をスクープしたり、歌手のホイットニー・ヒューストンやジョージ・マイケルなどの遺体写真を掲載したりしたこともある。歴代大統領をはじめ数々の政治家のスキャンダルも報じている。ニュース価値があれば徹底的にスキャンダラスな記事や写真を掲載する、歴史あるメディアだ。
ちなみに同紙はトランプ支持であることを隠してはいない。というのも、同紙の主要購買層が「中年で中産階級、高卒の白人女性」と言われていることからも、きちんとターゲット層に向けた記事を作っているだけという言い方もできる。
そのような過激なスタイルだけに、以前から敵も少なくなかった。セレブなどからは目の敵にされ、さらに01年の9.11同時多発テロの際には、炭疽(たんそ)菌入りの封筒が編集部に送り付けられて、編集者1人が死亡するという事件も起きている。
筆者は、その頃に米フロリダ州にあった編集部に取材で訪れたことがある(現在はニューヨークに移動)。大手メディアのように大きな看板が上がっているわけでもなく、大きなビルに入って、セキュリティで守られているという感じもなかった。入り口が狭い真っ白な壁の地味な建物に編集部があったのを覚えている。誰も、まさかあんなところで超有名タブロイド紙が作られているとは思いもよらないだろう。
関連記事
- スターバックス元CEOの嫌われっぷりを加速させる「大迷惑」な挑戦
米スターバックスのハワード・シュルツ前CEOが2020年の大統領選に出馬する意向を示し、騒動になっている。トランプ大統領の再選を阻止したい有権者にとっては大きな迷惑となり、「出馬するな」という声が飛び交う。シュルツはなぜこんなにも嫌われているのか。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。 - ファーウェイのスマホは“危険”なのか 「5G」到来で増す中国の脅威
米国が中国・ファーウェイの通信機器を使わないように友好国に要請していると報じられた。なぜファーウェイを排除しようとするのか。本当に「危険」なのか。その背景には、次世代移動通信「5G」時代到来によって増大する、中国の脅威があった。 - 慰安婦・徴用工の「強制」表現めぐり炎上 ジャパンタイムズが叩かれたワケ
日本のニュースを扱う英字新聞「ジャパンタイムズ」が、「慰安婦」「徴用工」に関する表現を変更すると告知して炎上。釈明する社告の掲載に追い込まれた。なぜ海外メディアから厳しく批判される事態を招いたのか。ジャパンタイムズに欠けていた視点とは…… - 人ごとではない? 「セックスパット」駐在員のとんでもない行動
「セックスパット・ジャーナリスト」に関する米雑誌記事が物議に。特にアジアで、駐在している欧米のジャーナリストがひどいセクハラを行っているという内容だ。なぜ海外でセクハラしてしまうのか。日本のビジネスパーソンも人ごとではない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.