アマゾンのベゾスCEO、不倫脅迫騒動があぶり出す「デジタル時代の危うさ」:世界を読み解くニュース・サロン(4/6 ページ)
米ネット通販大手アマゾンのジェフ・ベゾスCEOの離婚、不倫問題に関して、彼が米タブロイド紙から“脅迫”されたと主張し、騒動になっている。この問題から見えるのは、デジタル社会に生きる“危うさ”。それは私たちにとっても人ごとではない。
「チーム・トランプ」の一員だったタブロイド紙
さらにこの問題を複雑化させているのが、ドナルド・トランプ大統領の存在だ。というのも、トランプは、ナショナル・エンクワイアラー紙を発行する出版社のアメリカン・メディア・インク(AMI)のトップと長くじっこんの仲であり、事実、同紙は16年の大統領選のときから、トランプに有利になるような礼賛記事を繰り返し掲載してきた。その反面、対抗馬だったヒラリー・クリントン候補についてはしつこくネガティブな情報を報じていた。
そんなことから、ナショナル・エンクワイアラー紙はトランプを応援する「チーム・トランプ」の一員だと見られてきた経緯がある。また専門家らは、同紙は「トランプの兵器」であるとも皮肉っている。その偏向ぶりに議論の余地はない。
一方、トランプが毛嫌いしているベゾスは、米ワシントンポスト紙を13年に買収し、現在もオーナーを務める。数少ない米国の全国紙の一つであるワシントンポスト紙は、トランプにいわせれば米CNNなどと同様に「フェイクニュース」であり、トランプは同紙について、「ベゾスのためのロビー活動をする新聞のアマゾン・ワシントンポスト紙」と皮肉たっぷりにTwitterに書いている。
こうした見方から、ベゾス側は今回の不倫スキャンダルが、トランプの存在がちらつく政治的な「策略」ではないかと指摘している。もともとベゾスをおとしめるために始まった取材なのではないか、と言うのだ。さらにワシントンポスト紙といえば、最近、同紙のジャマル・カショギ記者がトルコのサウジアラビア総領事館で殺されたことを受けて、サウジアラビアやトランプを批判するような記事を掲載していた。トランプがそれを不快に思っていたことが、ベゾスの不倫取材と報道の背景にあるのではないかとの話も出ている。
逆に、ナショナル・エンクワイアラー紙側は、単純にベゾスが世界で最も裕福な男性であり、ニュース価値のある人物だから彼の取材を実施したと主張。完全な平行線になっているだけでなく、トランプ支持者VS.富裕層の構図にもなっており、問題はますます大きくなっているのだ。
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