観光列車に本気出すJR北海道の“到達点”はどこか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)
北海道に新たな観光列車時代が到来する。JR北海道は、JR東日本や東急電鉄と協力して道内に観光列車を走らせると発表した。常識を覆す試みで運行を実現することになりそうだ。海外の鉄道会社も含めたオープンアクセスの第一歩になるかもしれない。
北海道に新たな観光列車時代が到来する。2月12日、JR北海道は、JR東日本、東京急行電鉄、JR貨物と協力して道内に観光列車を走らせると発表した。2019年夏にJR東日本の観光車両「びゅうコースター風っこ」を宗谷本線で運行。20年夏には東急電鉄が子会社の伊豆急行の観光車両「THE ROYAL EXPRESS」を運行する。
この話はNHKが1月24日にスクープしていた。東急電鉄の「THE ROYAL EXPRESS」を20年までにJR北海道で走らせるという内容で、JR北海道の経営立て直しの一環だという。北海道に関心のある人々にとっては、東急の観光列車が北海道を走ることに驚いただろうし、「THE ROYAL EXPRESS」は観光列車のヒットデザイナー、水戸岡鋭治氏が手掛けた列車だと知って、大きな期待を抱いただろう。
その一方で、鉄道ファンたちはざわついた。常識で考えれば「THE ROYAL EXPRESS」は北海道では走行できないからだ。
「THE ROYAL EXPRESS」は直流電化区間用の電車である。しかしJR北海道には直流電化区間はない。札幌を中心とした交流電化区間と、その他広大な大地に広がる非電化区間しかない。NHKを追うようにして、翌日の北海道新聞は「新たに製造する豪華車両の運行を検討している」と記した。ああ、なんだ。「THE ROYAL EXPRESS」というブランドで、新しい車両を作るわけだな、と思わせた。しかし共同通信は明確に「THE ROYAL EXPRESS」の車両を走らせると報じた。
12日の正式発表で全てがハッキリした。NHKと共同通信が報じた通り、「THE ROYAL EXPRESS」そのものをJR北海道に持ち込んで走らせる。輸送はJR貨物が担当する。だから報道発表にはJR貨物が加わっている。経営難のJR北海道の活性化に貢献しようというわけだ。JR貨物としては、JR北海道の線路を借りる形でJR貨物列車を運行しているため、JR北海道の経営問題については当事者でもある。
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