最大11時間飲み放題の「バー」が、じわじわ増えている秘密:水曜インタビュー劇場(出会い公演)(4/5 ページ)
若者を中心に、人気を集めているバーがある。店名は「The Public Stand」(通称:パブスタ)。最大11時間飲み放題で、価格は男性3240円、女性は1080円。この安さがウケているわけだが、採算はとれているのだろうか。パブスタを立ち上げた、担当者に話を聞いたところ……。
儲かっている秘密
土肥: パブスタは当日の営業時間内であれば無制限に飲むことができて、料金もそれほど高くない。となれば「やっていけるのか?」といった疑問が出てくるのですが、店はじわじわ増えている。儲(もう)かっている秘密は、どこにあるのでしょうか?
竹内: 飲食店の経営指標のひとつに、FL比率があるんですよね。FL比率とは、材料費+人件費÷売上高で計算できて、一般的には50%を切ると「その店は儲かっている」と言われています。じゃあ、パブスタの場合、どうなのか。広さ25坪、スタンディング最大120人収容の店で、FL比率は38.8%なんですよね。ちなみに、営業利益率は21.5%。
ドリンクメニューを見ると、ビール、ウイスキー、ワインなど100種類以上ある。種類が増えれば増えるほど、原価は高くなる傾向があるのですが、それでもFL比率は50%を切っている。なぜか。ドリンクはたくさんあっても、フードメニューは10品しかないんですよね。しかも別料金にしていて、330円と540円のみ。しかも乾きものやスナック菓子など、仕込みや調理が不要なものばかりなので、人件費を抑えることができるんです。
「時間無制限で飲み放題」と決めたとき、社内からは不安の声がありました。「たくさん飲む人もいるので、採算が合わないのでは?」と。1号店を出したときも、そのことを心配していたのですが、杞憂(きゆう)に終わりました。ちなみに、ドイさんは「飲み放題」と言われて、どのくらい飲めますか?
土肥: がんばって、10杯くらいですかね。
竹内: オープン前、当社も1人10杯ほどを想定していました。しかし、いざふたを開けてみると、平均5〜6杯であることが分かってきました。10杯ほど飲めるはずなのに、なぜ5〜6杯しか飲まないのか。店内はスタンディング形式で、ドリンクをおかわりする際、カウンターでグラスを交換しなければいけません(VIP席を除く)。ちょっと席を外している間に、自分の居場所がなくなることがあるんですよね。
楽しく話をしているときに、ビールがなくなった。カウンターで注文している間に、話をしていた相手が別の人と楽しんでいる。こうしたケースが想定されるので、動きにくいのかもしれません。もちろんドリンクを楽しまれる人もたくさん来られているのですが、それ以上に「ここで体験を楽しもう」「新しい出会いをしたい」と思っている人が多いのではないでしょうか。
あと、居酒屋などで食事をして、2軒目として利用される人が多いことや、フードメニューが少ないことなどもあって、想定よりもドリンクの量が少ないのかもしれません。
土肥: 居酒屋と違って、フードメニューが少ない。ということは必要なスタッフ数も少なくてすむので、生産性が高くなる。結果、損益分岐点が低くなるというわけですね。
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