【第5話】我々にまだ余力を生み出せと言うのか!?:「働き方改革」プロジェクトリーダーを命ず(1/3 ページ)
X製作所で働き方改革プロジェクトに関する第1回の運営委員会が開催された。各部門のリーダーを前に日野下がプレゼンするも、いきなり白熱したモードになった。
日野下がX製作所の働き方改革プロジェクトリーダーに任命されてから2週間目の金曜日。
第1回のステアリングコミッティ(運営委員会)がキックオフとして開催された。執行役員、部長だけでなく、現場で具体的な改革案検討を指揮する課長、選任されたリーダーも出席している。
冒頭、小田社長が「業務改革により余力を生み出し、当社の再成長に向けた活動に振り向ける」「3カ月でテーマを見つけ、年度内に実行しきろう。まずは30%を目指すが、機能によっては50%までいけるのではないか」といったメッセージを熱く発信した後、日野下が具体的な推進体制やアプローチ方法、スケジュールを説明した。
日野下: ということで、この3カ月で集中的に討議して施策を出し切る考えです。また、この過程で、先行可能な業務の廃止やロボット化も行っていきます。皆さん、ぜひご協力をお願いいたしま……
堀尾: ちょっと質問よろしいですか?
人事部長の堀尾が手を挙げている。
堀尾: 社長は、30%の余力創出とおっしゃるが、人事部としてはこの半年で残業を前年比で20%削減しております。多様な働き方を支える制度改定も推進中です。正直ギリギリの体制でやっており、とてもではないがこれ以上の余力を創出する余地はないものと思われます。
脇坂財務経理部長が続く。
脇坂: 当部では、2年前の年度末から異動や転職などで8人減の123人となっております。が、若手優秀層の採用難度が上がっていることを考慮し、増員せずに何とか要務を回しております。この点を経営陣の皆さまにはご理解いただきたいです。
働き方改革についても、各リーダーに検討してもらいましたが、ロボット化は投資対効果に見合わないという結論になりました。また、よくご指摘を受ける通り、当部の業務は、いわゆるチェック業務が少なくありません。しかし、財経によるチェックにはそれぞれ意義があると思われるのです。
日野下: 堀尾さん、脇坂さんのおっしゃることはよく分かります。ただ、今回のフェーズではもう一段、抜本的なところまで踏み込んでいきたいという趣旨です。各部に置かれましては、「うまくいっているという認識の業務」「現状で回っている業務」であっても、工数ボリュームが大きく削減できそうな業務であればメスをいれていただきたいのです。
例えば、人事では、前回の業務量調査で社内研修回りの事務、運営、受講・評価管理に相当程度の工数がかけられていることが分かっています。今の役割分担はうまくいっていると伺っていますが、本当に人間がやるべき仕事か、人事がやるべき仕事か、社内でやるべき仕事か、今一度考えていただきたいのです。
日野下は続ける。
日野下: 財経のチェックが必要であり、当社の最後の砦となっていることは認識しています。この問題は、財経部門のみの問題ではなく、当社の回付・承認プロセス、ルールといった部門横断的な問題です。「ここまで割り切ればこれだけ簡素化できる」「全件チェックでない統制の利かせ方」をぜひ提言してほしいです。
このステコミには、意思決定できるメンバーもそろっています。そうした提言があれば即論点としていきます。
脇坂財経部長が反論する。控えめな口調だが、頬が紅潮し興奮していることが分かる。
脇坂: 日野下さんのおっしゃる趣旨はよく分かりますが、現場は具体的な解がない限り納得できないです。現時点では、20%とか30%の工数減には到底コミットできません。
すぐさま堀尾が同調する。
堀尾: 現場の実務を預かる身としては、私も脇坂部長に賛成です。
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