海外で増え続ける「一風堂」 運営会社に聞いた進出の苦労とラーメンの味:海外に100店超(1/5 ページ)
「一風堂」を運営する力の源(HD)が海外展開を進めている。海外の店舗数が国内を抜きそうな勢いだ。現地でラーメンをどのようにつくって売っているのか?
なぜあの企業は「戦略転換」したのか:
事業がうまくいっても、それが長く続くとは限らない。時代に合った新事業の立ち上げや経営方針の転換ができれば、持続的な成長につながるだろう。しかし、新しい戦略を実現し、成功させるのは簡単ではない。戦略転換した企業の収益の推移を追いかける。
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ラーメンチェーン「一風堂」を運営する力の源ホールディングス(HD)が、海外展開を進めている。
2008年、米国にラーメン店をオープンしたのを皮切りに、毎年のように進出先を開拓してきた。国内の店舗数は「一風堂」などが153店あるに対し、海外の店舗数は13の国と地域に105店まで増えた(18年12月末時点)。しかも、グループ全体の売り上げに占める海外店舗の割合は25.5%となっている。
同社はどのようにしてラーメンを現地でつくり、売り上げを伸ばしてきたのだろうか。海外事業の事業戦略を策定するCHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE.LTD.取締役の矢野亮太氏に話を聞いた。
なぜニューヨークを目指したのか
力の源HDが本格的に海外展開を始めたのは08年のことだ。米国・ニューヨークに1号店をオープンした。創業者の河原成美会長は2000年代に入ってから、ニューヨークへの出店を狙っていたという。
なぜ、最初にニューヨークを目指したのか。福岡で創業した一風堂は、1994年に「新横浜ラーメン博物館」に出店したことで、全国的な知名度を獲得した。日本の中心である首都圏で有名になったことで、全国展開が可能になった。この成功体験を踏まえ、世界のヒト・モノ・カネ・情報が集まるニューヨークで成功すれば、世界的な知名度が獲得できると考えたのだ。
この方針はヨーロッパへの進出にも反映されている。同社は14年にロンドン、16年にパリへと相次いで進出している。これも、ヨーロッパ市場を攻略するにあたり、中心的な都市を最初に攻めるという考え方に基づいている。
自社のブランドイメージを着実に広めるという観点から、ニューヨークやロンドンにある店舗は直営の形態をとっている。一方、店舗数をどんどん増やしていくアジアの店舗は、現地企業とライセンス契約を締結することが多い。自社の商号やノウハウを提供する見返りに利用料をもらう形式だが、フランチャイズチェーン(FC)とは異なり、運営に対して積極的に介入するスタイルだ。これは、創業理念を共有したいという同社の考えが反映されている。
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