杖にIoT? オートバックスが「見守り」を新事業にするワケ:クルマだけじゃない「安心・安全」(2/3 ページ)
カー用品大手のオートバックスセブンが独自のIoTプラットフォームを構築。高齢者や視覚障害者が使う杖にIoT機器を取り付ける見守りサービスなどを展開する。なぜ自動車分野を超えた新事業に挑むのか。そこには将来を見据えた構想があった。
なぜ「杖」にIoT機器? プラットフォーム活用の広がり
では、同社が構築するプラットフォームとはどういったものだろうか。約2年前から開発に取り組んできたIoTプラットフォームは、幅広いサービスに活用できるようにしていることが特長だ。
車載器など、さまざまな通信機器から収集したデータをもとに、位置情報や購買情報などを独自プラットフォームとして構築。この基盤をサービス開発に活用する。その内容は「高齢者運転見守り」「おでかけ見守り」「カーシェア・ライドシェアサービス」などのほか、「登山者見守り」「害獣駆除支援」なども視野に入れている。サービス提供を目指す自治体や企業が、ニーズに応じて柔軟に活用できる共通プラットフォームだ。
サービス開発を目指す事業者にとっては、プラットフォームを活用すれば、事業の立ち上げや撤退のハードルが下がる。莫大な投資をする必要がなく、リスクを低減できる。そのため、サービスの利用料も低く抑えることができる。
このプラットフォームを活用した新サービスの一つが、冒頭で紹介した「杖」だ。自動車関連として、高齢者がクルマで出掛ける際の「運転見守り」用のIoT機器の開発も進めているが、「移動はクルマだけではない」(八塚氏)。特に高齢になってくると、杖やシルバーカーと共に外出することも多くなる。「クルマ以外の移動シーンにも課題があると考えました」(同)
高齢者に日ごろの行動などをヒアリングをした結果、「杖にIoT要素を加えれば、見守りサービスができるのではないか」と考え、機器の開発を開始。実証実験を実施し、高齢者に使ってもらったところ、「使ってみたい」という声が多かったという。
現在は、九州で視覚障害者用の杖に機器を取り付ける実証実験を実施し、機器の改良を進めている。「現在のデモ機は重さ55グラムで、杖に取り付けるには大きくて重い。最終的には500円玉ほどの大きさにして、約30グラムまで軽量化する計画です」(八塚氏)
機器にはGPSが搭載されており、現在の居場所や移動履歴を把握できる。また、緊急通知ボタンが押されると、コールセンターから緊急連絡先に連絡が行くようになっている。さらに、自宅や特定の施設の周辺エリアを設定すると、そのエリアから外に移動したときに家族などに通知される。
19年夏ごろに発売予定で、本体価格は税別1万円以下、利用料は月500円以下を予定している。
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