働き方改革と無縁の「深夜国会」 膨れ上がる税金と“魔”の高揚感:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
新年度予算案の衆院通過を巡って「深夜国会」が開かれ、衆院職員の残業代が一晩で1800万円に上ったことが話題になった。さまざまな議論があるが、筆者が注目するのは深夜国会の「高揚感」。危険な高揚感で満たされないように「国会とは何か」を議論すべきだ。
税金の無駄使い? “公僕”だから当然?
議員の“残業代”は私たちの血税ですし、そもそも国会を1日開いた場合、約2億円の費用がかかるとされているので、深夜国会になれば通常支出しない光熱費や衛視らへの超過勤務手当なども発生してしまうのです。
このような事態に、議員も含め「税金の無駄遣い」だの、「野党は時間ばかり稼いでいる」だの、「そもそも自民党がきちんと答弁しないからだろ」だの、「与党側が工夫をすればいくらでも改めることができるじゃないか!」といった批判が相次ぐ一方で、「血税を扱うんだから寝る時間を惜しんででも議論して当たり前だろ!」という意見も少なくありません。
件の小泉進次郎議員らの改革案でも、「党首討論の夜間開催」なんてものがありましたので、特別職の国家公務員である国会議員は、“公僕”として国民に奉仕するのが使命ということなのかもしれません。
いずれにせよ「国会の役割とは何なのか?」という、そもそもの問題を考えない以上、何をやっても小手先でしかありません。国会が果たす最大のゴールが「政府提出法案を何本成立させるか」であれば、与党はひたすら時間稼ぎをし、野党は審議拒否をすることが繰り返されて当たり前です。
「深夜勤務禁止」とすれば無駄な残業代は減りますが、「何のための国会なのか?」という問題は残り続けるし、「いやいや、だって国会議員もみなさん高齢だし、人道的な問題もあるでしょ?」「そんなこといっても公僕なんだから」という禅問答も続くことになってしまうのです。
私は政治の専門家ではないので、あくまでも受け売りでしかないのですが、「造反を解禁にすればいい」と、ある政治学者の先生から聞いたことがあります。実際、多くの欧米諸国では、一定の条件のもと造反が認められているため、担当大臣の答弁に納得できなければ身内から造反者が出るため、国会に緊張感も出るとのこと。ぜひとも、そういった事例も参考に、国会改革を真面目に議論していただきたいです。
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