働き方改革と無縁の「深夜国会」 膨れ上がる税金と“魔”の高揚感:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
新年度予算案の衆院通過を巡って「深夜国会」が開かれ、衆院職員の残業代が一晩で1800万円に上ったことが話題になった。さまざまな議論があるが、筆者が注目するのは深夜国会の「高揚感」。危険な高揚感で満たされないように「国会とは何か」を議論すべきだ。
深夜国会の異様な「高揚感」
一方、私の専門的な立場で気になっているのは、「深夜国会」に疑義を申し立てながらも、深夜国会で政治家さんたちが醸し出す、異様な「高揚感」です。
実はあの独特の高揚感こそが、過労死や過労自殺に人を追い込む魔の感情なのです。
世間には「長時間労働はダメだよ」と言いつつ、自分が寝る時間がないほど忙しいことを、どこか自慢げに言う人たちが後を絶ちません。彼らは「睡眠時間の少なさ」を自慢し、「忙しい自分=認められている自分、必要とされている自分」を静かに誇張します。
「業務の成果を時間ではなく結果で評価すべき」とホワイトカラーエグゼンプションを訴える人たちの中でさえ、「時間をかけることを美徳」とする人は大勢います。このダブルバインドを生む心の動きが、悲劇が後を絶たない一因になっているのです。
私が参加した研究グループの調査では、「いい仕事をしたい」「会社に貢献したい」「お客さんを喜ばせたい」という気持ちが強い人ほど、ストレスがかかる環境で「自ら働き方を拡大」する傾向があることが分かりました。
仕事の要求とプレッシャーはストレスになる半面、モチベーション要因にもなります。そこに「社会に認められたい」という承認欲求と、「人に迷惑を掛けたくない」という意識がかけ合わさったとき、「いい仕事をするためには、私的な時間を犠牲にしてもやむを得ない」と、働きすぎに拍車を掛けてしまうのです。
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