「お金に振り回される人」と「お金で幸せになる人」の決定的な違い:「お金」と「仕事」の本当の話をしよう(3/4 ページ)
事業売却や上場で大金を手にするビジネスパーソンが増えている。しかし、そのお金に振り回される人と幸せになる人がいる。どんな違いがあるのだろうか?
「リスク管理」しながら「勝負」せよ
こうした事例は表に出ないだけで多数ある。しかも、パターンが酷似している。突如大金を手に入れ、贅沢(ぜいたく)に飽き、事業投資を始めるが想定が外れてしまう。しかし、周囲に迷惑をかけたくなかったり、諦めきれなかったりといった理由で、追い打ちをかけるように私財をベット(賭け)してしまい、全てを失うパターンだ。「ここまできて身を引くなんてあり得ない」という気持ちが、億万長者の理性を圧倒してしまい、ロスカットして身を引く気持ちにどうしてもなれないのだ。
筆者は現在、社会課題解決につなげるインパクト投資ファンド「ミッション・キャピタル」を経営させていただいている。私の自己資金に加え、投資家の方々の大切な資産を預かって運用する立場である。投資先の精査、分散投資によるリスク分散、海外投資の際の為替ヘッジ、そして景気後退時のリスクヘッジなど、あらゆるリスクを検討するのは私の負う当然の責務だ。「うまくいったらもうかる投資」で、「きっとうまくいく自信がある」からといって、リスク管理やリスクへの対応を怠っていいことには決してならない。リスク管理とリスクテークの関係性は表裏一体が真実で、二者択一ではない。
お金で自分を幸せにする人の共通点
お金で自分を幸せにできているのは、投資リスク管理のうまい人たちだ。そして、彼らにはある共通点がある。「お金を増やすことは目的ではなく、あくまでも手段。人生の目的は他にあり、何を成し遂げたいかを決めるのは自分だ」と明確な哲学を持っている点だ。
この「非金銭的目的意識」は、事業投資で想定が外れた場合、判断に謙虚さと冷静さを与える役割をする。「そうか。この手段(お金の使い方)では目的に到達できないのか。では現時点で他にどんな手段があり得るか」という、精神的規律が働く。
また、そうした人たちは、自己実現をするための目標設定にたくさんの時間を使う分、お金では買えないロマンをもっていることが多い。「よりすばらしい美女たちとおいしいものを食べて平日からクルーズに乗り、優越感に浸りたい」という衝動がなくはないにしても、「大義と信義を重んじ、自分がこの地球で生まれた意味や証を残したい」という願望が強い。
こうした自制心とロマンが、事業投資の想定が外れた際のブレーキをかけてくれるのだ。仮説が外れたら素直に失敗を認め、軌道修正をしたうえで再び勝負し、また理想を追求していく。なお、1つ付言すると、非金銭的目的意識を持つ人たちは、事業投資で全財産失うことを回避するだけでなく、多額の報酬を自ら「捨てている」場合も多い。今の地位や役職でそれなりに成功して、億単位(場合によっては10億単位)の報酬が約束されていても、自分のロマンを追求することを優先する。そのため、よりよい手段があれば、あっさりとそれまでの地位などを捨てて起業する人を、筆者は多く知っている。
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