「亀田の柿の種」を壊したフリカキックス、今のところ「吉」:あの会社のこの商品(2/6 ページ)
柿の種を砕き、ふりかけに使える商品が誕生した。亀田製菓の「FURIKAKIX(フリカキックス)」だ。社内の批判を乗り越え、どのようにして生まれたのか。担当者に話を聞いたところ……。
自社商品を壊すことはメーカーのタブー
企画されたのは17年秋で、開発に着手したのは18年春からだった。誕生の背景にあったのは、同社が目指す「グローバル・フード・カンパニー」の実現に向け、看板商品である「亀田の柿の種」がお菓子から食品に変わるきっかけをつかみたかったことにある。
「『亀田の柿の種』を砕いてふりかけにしたら食卓にあがるのではないか、というアイデアがあり、やってみることになりました」
商品本部デジタルマーケティング部長の佐田大介氏は、フリカキックス誕生の経緯をこのように振り返る。
佐田氏によれば、同社は過去に何度も、柿の種を砕いてふりかけにすることを考えたものの、これまで実現することがなかった。過去に、柿の種を使ったレシピブック『亀田の柿の種レシピ100』(エイ出版)を監修した経験から、同社は砕いた柿の種を活用するアイデアを多数持っていたが、ふりかけの実現を阻んできた課題を佐田氏は次のように明かす。
「柿の種を砕きふりかけにするということは、メーカーが一番やってはいけない完成品を壊すこと。実現するには、このタブーを破らなければならないわけですが、心理的なハードルが高く、社内ではネガティブに受け取る向きもありました」
砕いたものを売るのはもってのほか。だから、柿の種を砕く道具を開発したというわけである。
それでも、社内の理解を得るのは大変だった。佐田氏は当初、「会社を潰す気なのか」「何考えているんだ」「何かあったらどうしてくれるんだ」などと厳しいことを言われ続けた。しかし、そんな批判を気にすることなく、実現に向けて動き続けた。
社内に批判がありながらも企画・開発を推進できたのは、佐田氏が社内変革というミッションを帯びていたからであった。佐田氏は今から2年半前に亀田製菓に入社したが、入社時、田中通泰会長CEOや佐藤勇社長COOから「亀田製菓のやり方にこだわらなくていいから、やりたいようにやってほしい。亀田製菓をぶっ壊してほしい」と言われたという。
佐田氏のミッションは社内では周知のこと。社長、会長の言葉を受け、象徴的な商品である「亀田の柿の種」を壊してみたというわけである。批判する人もいたが、協力してくれる人たちのバックアップにより、開発を進めることができた。
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