ビジネスチャット時代、確実に淘汰される「自己チュー社員」とは:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
日本企業でも浸透するビジネスチャット。社内コミュニケーションが変容する中で、淘汰されてしまう社員像とは?
「リーダー」の概念が変わる
例えば、社内で新規事業を立ち上げることが決まり、新メンバーが集められたとしよう。ビジネスチャットがあれば、新規事業のメンバーは「〇×の件について教えてほしい」といった問いかけを社内に行い、知見を持っている人はチャットでそれを返してくれるはずだ。そのやりとりを見た別の人が、新しいアイデアを持ちかけるといった展開も期待できる。
一連のやりとりを俯瞰的に眺めれば、誰がそのプロジェクトに対して貢献しているのか一目瞭然であり、場合によっては、貢献度の高かった人をそのプロジェクトに招き入れることもできるだろう。定型的な業務の中でも、トラブルなど不測の事態が発生する可能性があるが、ビジネスチャットで情報を共有していれば、別の部署の人が有効な解決策を示してくれるかもしれない。
こうしたコミュニケーションが前提になると、リーダーシップの概念も変わってくる。命令口調で周囲を従わせる人がリーダーではなく、多くの知見を集めて、それをうまくまとめられる人が真のリーダーと見なされるだろう。こうした時代においては、上意下達にばかり腐心している社員はついていけなくなる。
最終的にはチャット上でのやりとりをAI(人工知能)がチェックし、必要に応じてAIが関連情報を表示してくれるようになるはずだ。社員から出された知見もAIが収集し、関連情報をブラッシュアップするとともに、誰が情報共有に貢献したのかについてもAI判定される可能性が高い。
ビジネスチャットの時代には、自身の仕事をこなすだけでなく、組織にどれだけ知見を提供できたのかも重要な評価項目となるだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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