令和時代の老後リスクとは? 入院できない人たち:専門家のイロメガネ(2/3 ページ)
たとえお金があっても入院を断られることがある。そんなリスクをご存知だろうか。病院から「ここは身内の方にでもサインをもらってください」と求められる書類がある。それが「身元保証人」の契約だ。
身元保証人とは何か?
保証人と聞くと、借金や家を借りるときの保証人をイメージする人が多いだろう。契約した本人が借金や家賃などを支払うことができなかった場合、支払いの肩代わりをするもので、法律で規定されているものだ。
一方、身元保証人とは何か?
身元保証人が具体的に何をするかは、実は法律で決まっているわけではない。内容は契約書次第だ。なかには身元保証人が何をするのか、はっきり書いていない契約書もあり、あいまいなものも多い。
入院費の支払いを保証するという意味はもちろんあるが、それ以外にも入院という特殊な状況から、賃貸アパートや借金の保証人以上のことを求められる。
緊急時の連絡先としての対応、治療方針の同意、治療後に自宅に戻れない場合は転院先や施設入所契約を責任もって行うこと、また仮に亡くなってしまった際は遺体の引き取りや葬儀の手配など、あらゆる要求をされることが多い。
病院が身元保証人に求めていることは、入院している間の全てに及んでいることが分かる。つまり身元保証人とは、入院者自身が身動きを取れない特殊な状況のなかで、病院側が困らないように本人の代わりに全てのことを処理してくれる人というわけだ。
身元保証人がいないことを理由に入院を拒んではいけないのだが、そのようなケースも実際にある。確かに病院側の要求をみると、なるほど、身元保証人が必要な事情にも一理ある。しかし中身をよく検討すると、必ずしも身元保証人がやらなくてもよいことが多い。
身元保証人は「保証」することがそれほど多くない?
「身元保証人を引き受けてください」と言われると、賃貸アパートや借金の連帯保証人のように、費用の支払いを含めて、全てを抱え込むと感じる人もいるのではないだろうか? しかし身元保証人といいつつ、求められる役割は「保証」ではない。
入院費の支払いは本人の財産が適切に管理できていれば、そこから十分支払えるはずだ。治療費すら困窮するケースでは、身元保証人が身銭を切るかどうかを考える前に、生活保護の受給など別の福祉サービスを考える必要がある。
退院後の諸手続きについても、本人が自宅に戻る場合はどのような受け入れ態勢を作るか、自宅に戻れる状況にないならどのような入所先の施設がよいのか、病院やケアマネージャーら医療や福祉に携わる専門家が一緒に対処してくれる。求められることは、方針を一緒に検討し、福祉サービスの利用や入所先施設との契約事務を行うことだ。
医療行為の同意についても、病院側は治療方針についてリスクをしっかり分かったうえで治療内容を選択してほしいと考えている。実際に求められていることは治療方針を「決定」してほしいということで、「保証」ではない。
「保証」が必要といいつつ、実際に求められていることは、本人の財産を適切に管理し入院費を支払い、退院後の処遇を「決定をする人」ということになる。
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