「月28日勤務」「危険な環境」 東京五輪の建設現場に根付く“恐怖の文化”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
2020年東京五輪の競技会場などの建設現場における「過酷な労働環境」を指摘する報告書が公表された。そこに記された「culture of fear(恐怖の文化)」という言葉が象徴するように、日本では非人間的な働き方が“当たり前”になっているのではないか。
日本の労働者たちを取り巻く「恐怖の文化」
さらに、2人の死亡が確認されたことや、慢性的な人手不足に加えて時間的制約に追われていることも指摘。「karoshi(過労死)」という単語が報告書では何度も使われ、 日本の労働者たちには「culture of fear(恐怖の文化)」があるとし、
「Wages remain low, dangerous overwork is common, and workers have limited access to recourse to address their issues(賃金は安く、危険な環境での長時間労働が常態化しており、一方で、働く人たちが満足に仕事を行うための機会を提供されていない<河合訳>)」
と、BWIの書記長のA.ユソン氏は警告しています。
「組織を変えたきゃ、若者、よそ者、ばか者の視点を生かせ!」というように、日本人の多くが「仕方がない」「今までもそうだったから」と、諦めたり見逃したりしていたことが、外国人のまなざしにはクリアに見える。
日本の「働かせ方」、日本人の「働き方」は、非人間的以外の何ものでありません。
「心は習慣で動かされる」とは、米国の教育心理学者ジェローム・セイモア・ブルナー博士の言葉ですが、「恐怖の文化」という表現が象徴するように、日本人は日本的“当たり前”に五感が縛られ、「ニッポン人はオカシイ。ニッポンの当たり前はセカイの非常識」になってしまっているのです。
新国立競技場の工事現場では、17年に現場監督をしていた23歳の男性が「過労自殺」したことを覚えている方は多いと思います。
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