なぜアコムは、いまだに過払い金問題で消耗しているのか?:専門家のイロメガネ(2/6 ページ)
一見昔話のようにも思う過払い金問題。しかし、現在も消費者金融各社は過払い金返還に苦しんでいる。特にアコムは当初の想定どおりに引当金が減っていない。なぜ過払い金の正確な返還額が計算できないのか。そこには、過払い金の返還請求を遅らせると、そこに利息がついてくるなどの制度的な理由があった。
過払い金とは、そもそも何?
そもそも過払い金とは何か? 簡単におさらいしておこう。国内のあらゆる取引に適用される金利の上限(上限金利)を定めた法律が、利息制限法だ。しかし、かつては一定の条件を満たすことで上限金利よりも高い金利を課すことが可能とされていた。
上限金利を超えても「問題ない」と考えられていたので、ホワイトでもブラックでもない、グレーゾーン金利と呼ばれていた。それが最高裁判決によって違法認定されたのだ。
過去にグレーゾーン金利を支払っていた人は、払い過ぎた利息部分の返還を請求できる。この払い過ぎた利息を、一般に「過払い金」と呼んでいる。過払い金の返還を専門用語では「利息返還」という。
会社がいったん受け取った利息を、後になって返してくれといわれて返還した場合、過去に収益として計上していた利息の返還を行えば、当然損失(利息返還損失)となる。
消費者金融会社やクレジットカード各社は、過払い金の返還で発生するであろう損失を適切に算定した上で「利息返還損失引当金」(以降、引当金)として見積もっておかなければならない。将来確実に発生する費用に対して(会計上の)お金を事前に積み立てておくようなイメージだ。
この見積額が十分でないと分かった場合には、新たに見積もりをやり直す必要がある。アコムが行った損失予測の再計算がこれだ。前述の通り、再計算により約400億円が過払い金返還費用として追加計上されたわけである。
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