なぜアコムは、いまだに過払い金問題で消耗しているのか?:専門家のイロメガネ(4/6 ページ)
一見昔話のようにも思う過払い金問題。しかし、現在も消費者金融各社は過払い金返還に苦しんでいる。特にアコムは当初の想定どおりに引当金が減っていない。なぜ過払い金の正確な返還額が計算できないのか。そこには、過払い金の返還請求を遅らせると、そこに利息がついてくるなどの制度的な理由があった。
過払い金返還損失を見積もるための計算方法
さすがにここまで予測が外れるとは誰も想像できなかったのではないだろうか? どうやればそれほど外せるのかかえって興味がわく。
引当金を見積もるための業界標準の計算方法は、以下の手順の通りだ。大雑把にいうと、過去のデータからどれくらい過払い金を返還することになるか計算するのだが、それをローン残高がある口座(正常口座等)とない口座(完済済み口座等)に分けて行うのがポイントだ。
- 過払い金のある口座を、(1)残高がある口座と、(2)残高がない口座に区分する
- 区分ごとに、A 口座数、B 返還実積率、C 平均返還額を求める。ただし、(1)は貸付金の完済までに発生する過払い金返還実績を、(2)は貸付金の完済以降に発生する過払い金返還実績をもとにBとCを算出する。
- 区分ごとに、A B Cを掛け合わせる。
- 区分ごとの見積額を合計する。
※(参考資料・業種別委員会実務指針第37号 消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い 日本公認会計士協会 2006/10/13 改正2012/5/15)
この計算の最大の問題は、ローン残高がある口座については、完済までの過払い金返還だけを見積もる点である(手順2)。ややこしい話に聞こえるかもしれないが、要するに完済したからといって過払い金の問題は終わるわけではない。それどころか完済して時間がたつほど利息に利息がついて雪だるま式に過払い金が増えるという、貸し手にとってはトンでもない、借り手にとっては美味しい仕組みになっているわけだ(詳細は後述)。図でいえば、黄色部分の過払い金返還は見積もられるが、グレー部分は全額抜け落ちてしまうのだ。
実際、返済中の揉め事を望まず、きちんと完済してから返還請求する債務者は少なくない。この人たちが丸々抜け落ちているのだから、予測が当たらなくて当たり前だろう。
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