なぜアコムは、いまだに過払い金問題で消耗しているのか?:専門家のイロメガネ(5/6 ページ)
一見昔話のようにも思う過払い金問題。しかし、現在も消費者金融各社は過払い金返還に苦しんでいる。特にアコムは当初の想定どおりに引当金が減っていない。なぜ過払い金の正確な返還額が計算できないのか。そこには、過払い金の返還請求を遅らせると、そこに利息がついてくるなどの制度的な理由があった。
なぜまだ過払い金問題で消耗しているの?
アコムがいまでも過払い金返還費用に苦しめられるのは、早い段階に十分な備えができなかったせいだ。
過払い金の返還請求を行うことが可能な期間は、過払い金のあるローンの最後の取引から10年間だ(条件次第では時効がさらに延長される)。適正な金利に条件変更された時点からではなく、ローンの完済から10年である。これがいったい何を意味するかというと、返還請求のタイミングで、受けとる過払い金が増減する、ということだ。
過払い金返還を請求する権利を持っている人がいたとして、いつ請求を行うのが正解だろうか? いますぐ? 全額返済した直後? それとも時効ギリギリ?
絶対にこうすべきという答えはないが、請求金額を最大化しようと考えた場合、「時効ギリギリ」が最良の選択肢となるケースがある。なぜなら過払い金には利息がつくからだ。当然、請求可能額は、月日の経過とともに徐々に増加する。
過払い金への利息に適用される利率は、民法の法定利率である5%だ(2020年4月以降の法定利率は3%)。
仮に過払い金が100万円あったとすると、年に5万円ずつ請求可能額が増える。過払い金返還請求のタイミングを待つ間を一種の投資と考えると、現在の低金利環境ではあり得ない高利回りの投資商品といえるかもしれない。
時効までの期間が完済後10年と長いうえ、請求を遅らせた方が返還額を増やせる事情があるのだ。問題が長期化するのも当然だ。
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