ビットコインが1年前の価格を回復 97万円まで上昇した背景
4月から始まったビットコインの価格上昇が止まらない。一時、97万円まで上昇し、1年前の価格を回復した。この背景には、米中貿易摩擦などの政治的混乱、新たな資産クラスとしての見方、1年後に迫った半減期などがある。
2018年初めに価格が急落したビットコインだが、19年4月に入ってから大きな上昇を見せている。現在の価格は日本円で約95万円となっており、一時は97万円まで上昇した。昨年7月につけた高値を超え、1年前の価格をやっと回復したことになる。
Coincheckでの流出事件以降、金融庁は事業者に対する規制を厳格化し、顧客保護の徹底に努めてきた。結果、初期の仮想通貨取引業者の中には撤退するところもあり、一方でヤフーや楽天、SBI、GMOといった大手IT企業が参入。5月末にはヤフーが出資するTaoTaoが、6月には楽天グループの楽天ウォレットがサービス開始を予定するなど、取引所の体制も整ってきた。
政治的混乱、新たな資産クラス、1年後に迫った半減期
ビットコイン価格がここに来て上昇した理由としては、政治的混乱によって世界経済の先行きが不透明になってきたためだという見方がある。
米中貿易摩擦の結果、人民元は対ドルで下落しており、安全資産を求める中国人投資家が資産をビットコインに変えているというものだ。また欧州でも、英国のEU離脱に伴い欧州議会選挙で混乱が起きている。ギリシャがEU離脱を試み始めた(Grexit)13年にもビットコインは大きく上昇し、Brexitが決まった16年にもビットコインは約2倍の上昇を見せた。
従来、混乱時の退避先資産としては金(ゴールド)が一般的だったが、ビットコインが”デジタルゴールド”としての立ち位置を固めてきたという見方もできる。
またビットコインが、投機先から資産クラスの一つに見られ始めているという変化もある。ポートフォリオの中に、株式や債券といった伝統的な資産とは値動きの異なる資産を組み込むことで、全体としてのリターンを向上できるからだ。すでに、機関投資家の22%が「仮想通貨を既に保有している」といい、さらにその配分率を倍増させることを検討しているという(3月11日の記事参照)。
金融業界の中でも、これまで仮想通貨に否定的だったJPモルガンが、ビットコインをコモディティ(商品)として扱い始めた。演算能力や電気代などからビットコインの製造原価を計算し、それを本質的価値として評価を始めている。
演算能力や電気代を負担し、ビットコイン取引を承認するマイナー(採掘者)には、対価として報酬が支払われる。ビットコインの場合、この報酬は一定期間ごとに半減する仕組みだ。次の半減のタイミングは約1年後の20年5月だと推定されている。報酬の減少は、ビットコインの製造原価の上昇につながるため、これが価格上昇を後押ししているとも考えられる。
一方でJPモルガンは、現在の急速な価格上昇は、17年末の仮想通貨バブルに似ているという警告も発している。
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