「大麻合法化しようぜ」に感じる“胡散臭さ”の正体 医療大麻の論点とは:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
有名人が大麻で逮捕されるたびに、日本でも「合法化」が議論になる。だが、医療大麻の話を持ち出す容認派には、医学的な根拠を示して真剣に議論する姿勢が感じられない。医療大麻ビジネスに乗り出しているイスラエルでは、薬剤として適切に取り扱う体制がある。
きちんと扱えば「普通の薬」になる
この会社では、大麻から鎮痛成分などをもたらすテトラヒドロカンナビノール(THC)やカンナビジオール(CBD)といった含有成分を抽出し、オイルとして製品化している。鎮痛剤として服用する際には、オイルを一滴、舌の上に落としたり、食事に混ぜて摂取する。タブレット型の薬もあり、きれいにパッケージングされた商品となっている(現在はまだ医療目的で国内のみで販売されている)。ガンやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、てんかんなど対象の病気によって濃度を調整することで多様な製品が作られているのだ。
要するに、普通の薬なのである。日本でも普段から使われているような鎮痛剤と変わらない。そこには、ファッションや文化としての「吸う」大麻のイメージはない。
つまり、容認派には、医師や医学博士などが研究した論文などによって、大麻が医療に貢献する可能性があると根拠を持って示してほしい。そうしないと説得力は落ちる。きちんと大麻の成分を抽出し、錠剤やオイルで製品化すれば、薬としての医療大麻というのもしっくりくる。そういう形で適切に扱うことで、大麻成分の本来の効果が誤解なく利用できるようになるだろう。ちなみにBOLファーマ社の大麻は、GMP(Good Manufacturing Practice=製造所の製造・品質管理基準)も順守されている。
そしてその大麻から抽出した「薬」をビジネスとして扱うことで、痛みに悩む人たちが摂取する鎮痛剤の一つの選択肢として提供されれば、日本でも誰も反対はしないのではないだろうか。「へ〜、この痛み止めの成分は大麻のTHCなんだ」といった具合に受け止められるはずだ。
ここで言いたいことは、大麻をきちんとした薬剤として扱い、ビジネスとして管理をするところまで行けば、大衆からも「合法化」を受け入れられるということ。事実、イスラエルは今、医療大麻を世界に輸出する「医療大麻大国」を目指して法整備などに乗り出している。
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