中小企業で男性社員の育休取得率100%を実現してみた:専門家のイロメガネ(5/5 ページ)
厚労省が進める男性社員の育休取得。「イクメンプロジェクト」として形は整ってきたが、育休に絡むトラブルが炎上するなど、定着への道のりは厳しい。男性社員の育休取得100%を実現した企業の経営者が、制度を円滑に運用するための工夫について説明する。
社会ができること
さて、社内においてはそれでいいかもしれないが、現状の日本では経営者にとって非常に重要な問題が残る。それは業績や取引先との信用についてである。
実際に毎月のように社員の誰かが長期休暇を取得していれば、取引先やお客さまに迷惑をかけることになる。下手をすれば取引を打ち切られるだろう。そうなると上記の策は現実性に欠ける。
実は日本はまだまだ他者へのやさしさに欠ける。下請け業者の担当者が長期休暇だったら納期を延長するだけの寛容さが必要だし、実際に欧州などはそうやって皆が休んでいる。
一部のホワイトカラーだけが休める働き方改革であってはいけないし、またサービス業や現場作業員なども同様に休める文化を醸成する必要がある。
当然ながら消費者としての私たちも、製造納期や供給に関して寛容でなければならない。これまでの日本では高い品質のものを短い納期で安価に得ることができたが、誰もが休める社会ではそうはいかなくなるはずだ。
この点は私たち日本人全員が見直していかなければならない問題でもある。
筆者 株式会社SweetsInvestment代表取締役 玉木潤一郎
建築、小売店、飲食業、介護施設、不動産など異業種で4社の代表取締役を兼任。一般社団法人起業家育成協会を発足し、若手経営者を対象に事業多角化研究会を主宰する。起業から収益化までの実践と、地方の中小企業の再生・事業多角化の実践をテーマに、地方自治体や各種団体からの依頼でセミナー・コンサルティングの実績多数。
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