不正行為は本当にできる? 現役銀行員が語る「隠蔽」と「情報管理」:銀行員が解説 ドラマ「集団左遷」のリアル【後編】(2/4 ページ)
ドラマ「集団左遷」のリアルをテーマにしたコラムの後編。現役銀行員の筆者が「不正行為はできるのか」「情報の取り扱いについて」を解説します。
不正が発覚しても隠蔽はできる?
これに関しては、特に銀行だからというものではなく、企業それぞれの体質、モラルの高低にかかっています。
従来銀行という業種は、残念ながら隠蔽(いんぺい)体質があったことは否めません。ドラマのような政界を巻込んだスキャンダルでも、あるいは最近問題になった融資に関する不正行為なども、その銀行が隠蔽した、あるいは組織ぐるみで不正を黙認したことが遠因です。
ドラマの不正行為も、見ている私にはそれほど現実離れしたものではなく、また違和感があまりなかったことは悲しい現実です。
不正な根回しはリアルにあるのか?
政治家や金融庁に賄賂を渡す場面がありましたが、これは現実離れしており、ドラマだけだと思います。現金を紙封筒で渡すなどドラマ上の演出としては面白いでしょうが、現実にはやる人はいないでしょう。
不正融資で資金を作ることが不可能と記したのと同じで、今どきこのようにあからさまな賄賂を受け取るほどリスク意識がない政治家や官僚もいないでしょう。不正に金を手に入れる方法はいくらでもあり、「私ならこうするのに」と思える不正融資や根回しのやり方もあるからです。
そして現実離れしているといえる1番の理由は「割に合うか?」という点です。
政治家や官僚のトップクラスの年収がいくらくらいか知りませんが、その安定を棒に振るほどの金額とはいったいいくらになるのでしょう? 少なくとも不正融資で紙封筒に入れる金額では到底足りないと思います。
私も若いころ、銀行員の預金着服など不祥事のニュースを見聞きする都度、同僚と「いくらだったら(着服などの悪事を)やるか?」と不謹慎ながら話したことがあります。
その答えは共通していて、真面目に定年まで勤めることも考えれば、たとえいくらでも悪いことはしない、割に合わないというものです。
少なくとも1億、2億ではやってられないといったところでしょうか。
銀行の平社員ですらこの値段です。政治家や官僚が、その地位をかなぐり捨ててまで賄賂を受け取るとは思えません。
ただし、連日報道されるように不正な根回し自体はなくなることがありませんので、現金あるいはそもそもお金以外の何かをその代償にしているのかもしれません。
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