“新リストラ時代”の肩たたきツール? 「適性検査」に潜む魔物:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
金融や製造などの大手企業で、大規模な早期退職や転籍などが広がっている。新手のリストラ策として使われるツールの一つが「適性検査」だ。適性を見極めて転職するのは良いことのように見えるが、「適性がある=いい仕事ができる」わけではない。なぜかというと……
適性検査にだまされてはいけない
極論をいえば「その後の教育」がなければ、適性検査は血液型占いのようなもの。適性検査をリストラの肩たたきのツールとして使うのは、現場にとっても、背中を押された個人にとっても、卑劣かつ不幸な策としか言いようがありません。
数年前まで、適性検査は「追い出し部屋」で使われていました。このやり方はテレビで特集なども組まれ、社会的にも大きな問題になりました。「キャリアアップ開発課」などにターゲットの社員を異動させ、そこで何度も適性検査を受けさせる。「営業の才能がある」だの、「介護の才能がある」だの、その都度適性テストの結果を示し、転職を促すという手口をとっていたのです。
しかし、露骨な肩たたきはメディアからたたかれる格好のネタ。そこで件の男性の会社のように“講習会”で、間接的に使う企業が出てきたのでしょう。
悲しいことではありますが、おそらく今後も会社はあれやこれやと狡猾(こうかつ)なリストラ策を考えるはず。なんせ最近のリストラは、「会社がもうかっているうちにやっておこう」という予防的リストラです。今後進めるIT化を見込んで「余る人」を切る。顧客の需要の変化や人口減少の中で、事業構造を変えるために「余る人」を切る。「新リストラ時代」が到来してしまったのです。
どうか転職や早期退職を考えている方は、くれぐれも適性検査にだまされぬようお気を付けください。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
お知らせ
新刊『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)が発売されました!
2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。
“ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。
不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。
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