ノンフィクション作家・溝口敦が説く 「それでも起業は人生を変える」理由:終身雇用「崩壊」時代に送るエール(3/4 ページ)
30年以上、「脱サラ」や起業のドラマを見つめ続けたノンフィクション作家・溝口敦氏に聞く終身雇用「崩壊」時代の働き方と生き方――。
自分の好きなものを持っている人は強い
――約30年間、見事に成功した起業家も、決してうまくいったとは言い切れない境遇の人にも会ってきたわけですが、彼らに共通して感じることは何ですか?
溝口: 広い意味では「共感」ですよね。少なくとも、「この人はなんてばかなことをしたんだろう」とは思いません。駄目だったら(事業の)方向を修正すればいいわけだし。
ただ、(起業する人に)僕がお勧めするのは、独立する上でなるべく費用を掛けてはいけないということです。場所を借りず、人を雇わず、あらゆる面でお金はかけない。前に在籍していた会社が資本を提供してくれる場合もあるでしょうけれど、やはり独立するということは役人の天下りとは違う。自力でやるということはやはり、大変です。
――一方で、会社への不満を募らせつつも、なかなか独立の覚悟が持てない人、何をしたらいいのか迷っている人も多いと思います。アドバイスをお願いします。
溝口: 独立・起業してきた人を取材して一番に感じたのは、「自分の一番好きなものを持っている人は強い」ということです。好きなものを持っていれば、それを生きがいにすることができるわけですよね。
ただ、持っていない人もいます。自分は何が好きなのか、40〜50歳になっても分からない人が大勢いる。こういう人たちには、「もともと自分は何がしたかったのか」を思い出してもらいたい。思い出してもらっても、浮かばない人もいるかもしれないけれど……。
これは中年の人に向けた言葉ではありませんが、子どもの時から好きなものを見つけておく教育、育ち方が必要なんじゃないかと思います。好きなことは(仕事でも)苦ではないし、あるいは好きなことに近い分野で働くということが大事ですね。
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