ローソンのスイーツ部門が復活 “冬の時代”をどう脱却したのか:大ヒット商品「バスチー」の効果も(2/3 ページ)
ローソンのスイーツ部門の業績が復活している。特定の層を狙った商品開発が成功した。大ヒット商品「バスチー」も貢献している。
「バスチー」という“お化け”商品の登場
ここ数カ月の好調な業績をけん引しているのは、3月に発売されたバスク風チーズケーキ「バスチー」(215円)だ。
バスクチーズケーキとは、欧州のバスク地方で古くから愛され続けているこんがりとした焼き目の素朴なチーズケーキだ。外は香ばしく、中はなめらなか食感が特徴。バスチーは、発売から3日間で100万個を販売。5日間で100万個売れたプレミアムロールケーキより早いペースだった。8月4日時点で累計販売数は1900万個を突破。これもローソンのスイーツ史上“最速”のペースだという。
バスチーが爆発的に売れる前、ローソンで販売数・販売額ともにほぼ1位を独占していたのは「大きなツインシュー」(113円)だった。スイーツの担当者は「ここ6〜7年間、ずっとツインシューが売れていました。シュークリームという親しみのある商品であることと、お手頃な価格が支持されていました」と説明する。バスチーは発売以来、18週連続でデザートの売上高1位を継続している(7月29日時点)。また、発売から7週連続で販売数1位だった。いかに、バスチーが“お化け”商品かということを理解できるだろう。
ターゲットの絞り込みに成功
ローソンのスイーツが好調なもう1つの理由は、バスチー以外の商品開発をする際、ターゲットの絞り込みを強化したことだ。
商品開発をする際は、「40代女性向けには●●」「20代男性向けには××」といったようにターゲットを決めるのが一般的だ。しかし、2018年頃までは特定の層に“ササる”強い商品がなかったという。スイーツ担当者は「お客さまに調査をした際、『ローソンの商品にはワクワク感がない』という声があった」と振り返る。
そこで、ローソンでは20代、30代、40代、50代の女性に刺さるような商品開発をしようという方針を打ち出した。男性客は同じような商品を繰り返し購入する傾向があるので、新商品に反応しやすい女性客を狙う作戦だ。その結果、バタークリームをクッキー生地で挟んだ「サクバタ」は20〜30代の女性、「バスチー」は30〜40代の女性、もちもちの薄皮生地に自家炊きカスタードを閉じ込めたどら焼きのような「どらもっち」は50代の女性、といった具合に特定の層にササる商品開発に成功した。
ローソンにとって、デザート部門の売り上げは全体の4〜5%程度。ただ、ヒット商品が出れば新規顧客の獲得に貢献するという特徴がある。また、1人のお客が家族や同僚の分のスイーツを買ったり、自分用に複数購入したりする傾向があるため、平均客単価の上昇も見込める。
ローソンは8月20日以降、バスチーの新作となる「プレミアムバスチー」(320円)や、どらもっちの新作「どらもっち チョコチップ&ホイップ」(180円)などを相次いで投入する。再成長のきっかけをつかめるか。
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