「丸ビル」の17年 なぜ“オフィス街・丸の内”は変わったのか:丸の内は今も“31メートルの街”(3/4 ページ)
再開発が加速する東京・丸の内。エリアを代表する建物が、2002年に開業した「丸ビル」だ。丸ビル建て替えを機に、“オフィス街”の丸の内は大きく変わった。丸ビルが変えたもの、変わらずに残っているものとは何だろうか。
休日の来街者数は3倍に
丸ビルの建て替えを皮切りに、周囲の風景も大きく変わっていった。07年に開業した「新丸ビル」を含め、大規模な商業施設を備えた高層ビルが増えた。そんな変化の中でも、人の流れを変えるきっかけとなったのが、メインストリート「丸の内仲通り」の再整備だ。
丸の内仲通りは、東京駅から見ると、丸ビルや新丸ビルの裏側に面している道路。丸の内の中心部を南北に貫いている。1990年代までは金融機関の路面店が多かった場所だ。
丸ビル建て替えに合わせて、この仲通りを「“人”が中心の空間」に変えるため、まずは仲通りに面したビルの1階部分に、有名ブランドの店舗や飲食店を誘致。さらに、街を回遊しやすくするために歩道を広くした。車道の幅を2メートル狭めて、両端の歩道を1メートルずつ広げたのだ。歩道にはアルゼンチン斑岩を敷いて石畳の道をつくり、ケヤキの街路樹を植えて緑あふれる空間にした。
雰囲気が一変した仲通りでは、イルミネーションや盆踊りなどのイベントが1年を通じて開催されている。2015年からは、歩行者に道路を開放し、オープンカフェやアートなどを楽しめる「アーバンテラス」を実施。丸ビル建て替え前と比べて、休日の来街者数は約3倍になったという。
オフィス街から、多機能で多様な街へ。丸の内が変わった背景には「交流を活発にしたい」という、再構築を始めた当初からの狙いがあった。「思い描いていたのは、さまざまな人が交流してイノベーションが起こる街。オフィスばかりどんどんつくっていくのではなく、『長期的に丸の内をどうしていくか』という視点で判断した」(広報担当者)。今でこそ、“イノベーション”という言葉があふれているが、丸の内には20年近く前からその考え方があった。
【更新:2019年9月12日 一部内容を変更しました。】
関連記事
- 日本一の330メートル高層ビル、森ビルが着工 “超高層”は今後10年で大きく変化
森ビルは8月5日、虎ノ門・麻布台地区に高さ約330メートルの超高層ビルなどを建設する大規模再開発事業に着工。完成時点で日本一の高さのビルになる。一方、それを上回る390メートルのビルの建設計画もあり、超高層ビルの様相が変わっていきそうだ。 - 開業から40年たっても、池袋サンシャインシティが年3000万人を集める理由
東京・池袋の複合施設「サンシャインシティ」。開業から40年以上たっても、来街者数が過去最高を更新するなど、進化を続けている。当初“東洋一”の高さを誇っていたビルは何が変わり、何が変わらないのか。その魅力を見直したい。 - 東京に残る90年前の建造物 再生の共通点は“アート”
東京で約90年前に造られた建造物が生まれ変わろうとしている。池袋駅の東西をつなぐ薄暗い通路と、上野に残るかつての駅舎だ。古い建造物の価値を高めるための共通点は「アート」だ。 - 木造超高層ビルは建つか 住友林業が打ち出す構想とは
住友林業が2041年を目標に、高さ350メートルの木造超高層ビルを建設する構想を発表し、話題を呼んでいる。どのような計画なのだろうか。 - 休止間近!「上野動物園モノレール」が担った“意外な役割”
11月1日から、日本最古のモノレールが運行を休止する。上野動物園モノレールだ。300メートルを結ぶ約1分半の路線だが、62年間を振り返ると、さまざまな困難を乗り越えた歴史があった。休止前にその歩みを振り返ってみては。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.