観光客を呼べなかった「静岡のお茶」が、若い女性を引き付けている理由:お茶屋さんのかき氷に行列(1/5 ページ)
静岡県中部地域で「お茶」を観光コンテンツ化する動きが活発だ。静岡のお茶を使ったかき氷を提供する取り組みは、SNSを使う若い女性客の心をつかんだ。なぜ今、知名度が高い「お茶」と観光を結び付けようとしているのか。背景には大きな危機感がある。
「ウチの地域には観光客を集めるものなんてないよ」。他の地域のレジャー施設や景勝地を横目に、そう思っている人もいるのではないだろうか。しかし、日常として地域に根付いてきたものを観光資源として活用できる、そんな可能性があるかもしれない。
静岡市などを含む静岡県中部地域では、生産量日本一の「お茶」が、“インスタ映え”するアイテムとして若い女性客などを引き付けつつある。その一例が、静岡のお茶を使ったかき氷を期間限定で販売する「茶氷プロジェクト」。初開催の2018年は、3カ月間で3万杯以上を販売した。この成功を足掛かりに取り組みの幅が広がっている。
なぜ今、知名度が高い「お茶」をあらためて観光資源に育てようとしているのか。取り組みを推進する公益財団法人するが企画観光局と、現地の事業者に話を聞いた。
日本一のお茶が“観光”につながっていない
「伊豆や浜松、富士山のような強い個性がないんです」。するが企画観光局の八木将彦さんは硬い表情で話す。それは、同局が管轄する静岡県中部地域の現状だ。
するが企画観光局は、静岡市、島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、吉田町、川根本町の5市2町で、観光誘客に関する市場調査や戦略立案を行うDMO(観光地経営組織)。17年に静岡観光コンベンション協会から名称を変更し、新たな観光コンテンツの企画やプロモーション活動に着手した。
観光誘客という課題に取り組むときに考えたのが、地域としての一番の“武器”。観光地としては地味なこの地域にも、「お茶の一大生産地である」という大きな特徴があるからだ。しかし、お茶という産業を“観光”に結び付ける動きはこれまでほとんどなかった。
「観光で人を呼ぼう、という意識が薄く、生産地なのにお茶を“楽しめる場所”がない。もっとお茶に興味を持ってもらうためにも、地域一体となった情報発信が必要なのです」と八木さんは話す。
その背景には、観光誘客という課題だけでなく、お茶という産業そのものを取り巻く環境の厳しさもある。
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