観光客を呼べなかった「静岡のお茶」が、若い女性を引き付けている理由:お茶屋さんのかき氷に行列(2/5 ページ)
静岡県中部地域で「お茶」を観光コンテンツ化する動きが活発だ。静岡のお茶を使ったかき氷を提供する取り組みは、SNSを使う若い女性客の心をつかんだ。なぜ今、知名度が高い「お茶」と観光を結び付けようとしているのか。背景には大きな危機感がある。
お茶産業を取り巻く厳しさは、需要の変化という形で表れている。2000年代に入ってペットボトルのお茶が一般的になり、「お茶をよく飲んでいる」という人も多いだろう。実際、ペットボトルなどの容器に入った「緑茶飲料」への支出額は増加してきた。
しかし、一方で「茶葉」の需要は縮小傾向にある。緑茶飲料がよく飲まれるようになり、急須でお茶を入れることが減ったからだ。緑茶飲料は少ない量の茶葉で作ることができる。茶葉の需要が縮小すると単価が低下し、生産者の仕事は厳しくなる。生産者の高齢化も加わり、廃業や耕作放棄というケースも増えているという。
「お茶で観光客を呼ぶ」という取り組みは、地域の産業を変える試みにもつながる。地域の特徴を見直し、そこから時代に合った新しい魅力を生み出す可能性を秘めているのだ。
ただ組み合わせるだけではない「お茶×かき氷」
これまでにないお茶の取り組みとして、するが企画観光局が18年に立ち上げたのが「茶氷」プロジェクトだ。お茶屋さんやお茶カフェなどと協力し、若い女性を中心に人気がある「かき氷」と静岡のお茶を組み合わせたメニューを展開。お店巡りをしてもらおうという企画だ。
初開催の18年は12店舗が参加。7〜9月の3カ月で3万杯以上を販売し、行列ができる店舗も目立った。好評だったことから、19年は「うちの店もやってみたい」という店舗が増加。30店舗が茶氷メニューを考案し、販売した。
なぜ、お茶を使ったかき氷が成功したのか。その理由は、商品の「見た目」にある。
「メニュー開発の当初は、ダメ出しすることが多かったですね」と振り返るのは、するが企画観光局の鈴木杏佳さんと鈴木香穂さん。茶氷プロジェクトを担当している。このプロジェクトで提供するのは、若い女性がSNSで発信したくなるようなかき氷でなければならない。「どこにでもあるような“あずき+白玉”のかき氷にとどまらず、それぞれのお店らしさや得意分野を生かしてもらう」(鈴木杏佳さん)商品にするため、フルーツやアイスクリームなどのトッピング、シロップの種類、全体の色合い、器などをアドバイス。店舗と一緒になって商品をつくり込んだ。
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