観光客を呼べなかった「静岡のお茶」が、若い女性を引き付けている理由:お茶屋さんのかき氷に行列(3/5 ページ)
静岡県中部地域で「お茶」を観光コンテンツ化する動きが活発だ。静岡のお茶を使ったかき氷を提供する取り組みは、SNSを使う若い女性客の心をつかんだ。なぜ今、知名度が高い「お茶」と観光を結び付けようとしているのか。背景には大きな危機感がある。
その結果、商品を一覧できるパンフレットは鮮やかに仕上がった。おしゃれなカフェのメニューのようなかき氷が並ぶ。抹茶だけでなく、ほうじ茶や和紅茶のシロップも楽しめる食べ比べ商品、チーズクリームが載った商品、お茶漬け風のかき氷など、多彩だ。
お茶の製造・小売を手掛ける、創業70年の丸玉園(焼津市)は、18年から茶氷プロジェクトに参加。19年は、ホイップクリームを載せた食べ比べ商品「ラテアイスツリー」(税込940円)を販売している。静岡抹茶、ほうじ茶、ストロベリーの3つの味が楽しめるかき氷だ。社長の増田啓介さんは「インスタを見て、県外から来たという若いお客さんも増えている」と話す。土日は行列ができることも多いという。
丸玉園は、「手軽に、おいしく、おしゃれに」をコンセプトにした新ブランド「SANOWA」を立ち上げ、さまざまな煎茶やフレーバーティーなどを少量ずつ購入できる商品を展開するなど、若い世代の取り込みに熱心だ。それは危機感の表れでもある。増田さんは「まずは若い人たちにお茶屋さんに来てもらうきっかけが必要。かき氷をきっかけに来てもらえれば、店内の他の商品を見てもらって、魅力を伝えることもできる」と話す。実際に、かき氷を食べに来た客が茶葉を買っていくことは多く、お茶の販売にも効果が出ているという。
19年の茶氷プロジェクトでは、8月に「茶氷フェス」というイベントを初開催。10店舗が参加し、2日間で1万870杯を販売した。その効果もあって、今年は8月までの2カ月間で約4万杯を販売している。
「かき氷を食べて終わりではなく、お店のファンになってもらうことが大事」「お茶を楽しんでもらうこと、静岡観光してもらうことにつなげたい」と、鈴木杏佳さんと鈴木香穂さんは意気込む。県内の他の地域の店からも「やりたい」という声が上がっており、今後はさらに規模を拡大して認知度を高めていく方針だ。
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