全長12キロの路面電車「都電荒川線」が10年先も走り続ける条件:“都民の足”から観光へ、東京さくらトラム(3/4 ページ)
東京の街を走る路面電車・都電荒川線(東京さくらトラム)。かつて都心で隆盛を誇っていた都電は、交通事情の変化でほとんどが廃止された。なぜ荒川線だけが残っているのか。利用者減、赤字が続く都電のこれからの活路とは?
荒川線だけが残った理由
都電の中で唯一残った荒川線は、もともと「27系統」(三ノ輪橋〜赤羽間)と「32系統」(荒川車庫前〜早稲田間)という2つの路線だった。それらを統合したのが、現在、三ノ輪橋〜早稲田間を走る荒川線だ。
では、なぜこの路線だけが残ったのか。まず、27系統と32系統はもともと、車が走る道路ではないところに敷設された「専用軌道」の部分が多かった。自動車とは別のところを走るため、渋滞に巻き込まれることがなく、定時性を確保しやすかったのだ。ちなみに、27系統の中でも、専用軌道ではなかった王子駅前〜赤羽間は廃止されている。現在、荒川線の12.2キロのうち、専用軌道が10.5キロを占め、道路上にある併用軌道は1.7キロしかない。
そして、専用軌道の部分が多いことから、荒川線に替わる路線バスを運行する道路がない点も挙げられる。荒川線を利用していた人が他の交通機関で移動しようとすると、乗り継ぎや遠回りを強いられるケースが多いという。
加えて、沿線住民からの存続の要望も強かった。当時、27系統と32系統を合わせると、1日10万人ほどが利用していた。
都電が現在の形となって約45年がたったが、これまでに「都電の廃止の話が出たことはない」(担当者)。2000年11月には、地元の要望によって新しい停留場もできた。起点の三ノ輪橋の隣の「荒川一中前」停留場だ。近隣にある商店街「ジョイフル三ノ輪」の買い物客の利便性が高まったという。都電は昔と比べて利用者数が半減したものの、地域に親しまれる交通手段であり続けている。
とはいえ、路線を維持していく上で、利用者数を増やして収益性を高めることは避けられない課題。それを解決するために、都電が活路を見いだそうとしているのが「観光」だ。
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