「無駄なことをやり続ける」 喫茶店不況の中、創業55年のレトロ喫茶が人気のわけ:1964年から2020年へ(2/5 ページ)
喫茶店の倒産が相次いでいる。東京商工リサーチによると、2019年1〜8月の期間で倒産した喫茶店は42件。過去20年の中で最多ペースに並ぶ勢いだ。こうした中で、新宿にあるレトロな“純喫茶”が9月、新たな店を西新宿に出店した。店名は「珈琲西武」。新宿三丁目にある1号店は1964年にオープンし、今年で55年目を数えるほどの老舗純喫茶だ。喫茶店チェーンでは、200円台からコーヒーが飲める店も増えている中、珈琲西武のコーヒーは最低でも600円。それでも、平日や休日を問わず入店待ちの行列ができるほどの人気ぶりだという。
1杯600円は安い?高い?
大手喫茶店チェーンでは200円代でコーヒーを提供する店もあり、コンビニでは100円で買うことができる。ワンコインでコーヒーを味わえる時代に、1杯600円はやや高い価格だといえるかもしれない。
珈琲西武の運営元である新宿メトログループに属する三信商事(東京都新宿区)の村山拓氏は「確かに『高い』という受け止め方ももちろんある。しかし、商品だけではなく、『時間』も売っている。コーヒーを飲むだけでなく、おしゃべりをしても良いし、新聞を読んだり本を読んだり、仕事をするのも良い」と話す。確かに、店内の椅子はソファ調になっており、座り心地が良い。ゆったりとした音楽もかかっており、居心地が良い空間が形成されている。
こうした空間の根強いリピーターも多い。かつては今以上に常連客も多く、来店すると利用する席もスタッフの中で“暗黙の了解”のように共有されていたという。常連客同士のコミュニティーも形成されており、常連の1人が来ていないと他の常連が心配する、というようなこともあった。2号店も、オープンからまだ日が浅いが既にそうした席ができている。また、人材の確保にも良い作用をもたらしている。一般的に人気が低いとされる飲食業だが、アルバイトの募集をした際にはすぐに埋まってしまうほどの人気だという。「もともとお店のファンの方が応募してくるケースも多い」(村山氏)といい、ファンであるがゆえに目的意識も高く、働くことに誇りを持ったスタッフが日々サービスを提供している。
関連記事
- こんな時代に純喫茶の経営に乗り出した男の「なるほど」な勝算
コーヒーチェーンが増加するに従い、“昭和の純喫茶”が次々と姿を消している。こんな状況で純喫茶の経営に乗り出した男がいる。どんな勝算があるのだろうか。 - 東京の愛煙家が集うベローチェとルノアール 受動喫煙防止条例への対応は?
2020年に東京都の受動喫煙防止条例が施行されると、東京を中心にチェーン展開するベローチェとルノアールは経営に大きな影響を受ける可能性がある。残り2年でどのような対策をとる予定なのだろうか。 - 「香り」のために“ふた”まで新開発 特許も出願 ローソンが異様にコーヒーへこだわる理由
ローソンが、コーヒーの品質向上に心血を注いでいる。10月22日から全国で展開していく新たなコーヒーでは、焙煎の方法を見直す。また、リニューアルしたコーヒーをより良く楽しんでもらうため、ホットコーヒー専用の“ふた”を新たに開発したという。 - 「昭和の喫茶店」が廃れる一方で「ルノアール」が好調な理由
低価格が武器のコーヒーチェーンが伸びる一方で、昔ながらの「昭和の喫茶店」が次々と閉店を余儀なくされている。喫茶店としては割高な料金でゆったりと過ごせる椅子やテーブルが特徴の「喫茶室ルノアール」が好調だというが、その理由とは? - ドトール、休日減らして「有給奨励日」に 有給取得の“水増し”に厚生労働省「望ましくない」
4月から企業に義務付けられた従業員の有給取得。年間10日以上付与されている人について、5日以上取得させる必要がある。こうした中で、ドトールコーヒーがもともと休日だった日を出勤日にした上で「有給奨励日」に。理由については「改元などで祝日が多くなり、調整する必要が生じた」とコメントしている。働き方改革に逆行する取り組みを、厚生労働省はどう受け止めているのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.