「東京産カカオ」のチョコはなぜ生まれたか “チョコレート屋のおやじ”の夢:16年かけて商品化(1/3 ページ)
史上初の「東京産カカオ」を使ったチョコレートが商品化された。プロジェクトを立ち上げた平塚製菓の平塚正幸社長は、16年かけて“夢”を形にした。カカオ栽培から商品開発まで、どのように成し遂げたのか。平塚社長に思いを聞いた。
「経営者としてではなく、“チョコレート屋のおやじ”として夢を見る。そこから始まった」。そう語るのは、菓子製造を手掛ける平塚製菓(埼玉県草加市)の平塚正幸社長。同社は11月1日、史上初の“東京産カカオ”を使用したチョコレートを発売する。
東京で育てたカカオでチョコレートをつくる――。不可能といわれた挑戦は、16年かけて実を結んだ。「夢とロマンの結晶」(平塚社長)というチョコレートはどのように生まれたのか。平塚社長に思いを聞いた。
自分で育てたカカオでチョコレートを作ってみたい
平塚社長がカカオに心を奪われたきっかけは、多くの日本のチョコレートに使われるカカオの原産地、ガーナを訪れたことだった。広大なプランテーションで、ラグビーボールのようなカカオの実がゴロゴロとなっている。その光景を目の当たりにして、「この木が身近にあったらどんなに楽しいだろう」と、わくわくした。
1901年創業の老舗である平塚製菓は、大手菓子メーカーのOEM(相手先ブランドでの生産)が主力。取引先は70社にも上る。2000年までは自社ブランド商品も製造していたが、平塚社長がOEM路線への転換を決断。それが奏功して生産量は伸び、20年には新工場の建設も予定している。
そのため、同社にとってはOEMが本業。「菓子のお役立ち企業」(平塚社長)としての役割を担うことが何よりも重要だ。今回の「東京産カカオ」の取り組みは、「夢や挑戦を忘れてはいけない」という平塚社長の思いを表した“フラッグシップ”の位置付けだという。
しかし、カカオが育つ条件は限られている。年間を通じて高温多湿なアフリカや中南米、東南アジアなどの地域が主な原産国だ。日本で育てた事例やノウハウはほとんどなかった。
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