「東京産カカオ」のチョコはなぜ生まれたか “チョコレート屋のおやじ”の夢:16年かけて商品化(3/3 ページ)
史上初の「東京産カカオ」を使ったチョコレートが商品化された。プロジェクトを立ち上げた平塚製菓の平塚正幸社長は、16年かけて“夢”を形にした。カカオ栽培から商品開発まで、どのように成し遂げたのか。平塚社長に思いを聞いた。
「年によって味が変わる」新しい楽しみ方を提案
平塚社長の夢から始まったプロジェクトは、多くの人を巻き込みながら、少しずつ形になっていった。15年には、東京産カカオを使ったチョコレートが完成。そして19年11月、「TOKYO CACAO」という商品として、本格的な販売が始まる。
「TOKYO CACAO」は、カカオ70%のチョコレート2枚が缶のケースに入っていて、価格は3000円(税別)。初年度は2万個限定で販売する。カカオのおいしさを最大限に引き出すため、高いカカオ比率と、砂糖などのシンプルな原材料にこだわったという。チョコレートには、伝統的なガラス細工の江戸切子をイメージした模様が入っている。
東京産カカオのチョコレートは他の産地と比べて、「フルーティーでマイルドな味わい」が特徴だという。食べてみると、少し酸味があり、かんきつ類のようなフルーティーさと鼻に抜ける香りを感じる。
本格販売に先駆けて、10月24〜30日に東京・渋谷の商業施設「渋谷ヒカリエ」で期間限定販売を実施。11月から公式オンラインストアで販売となるが、すでに予約を受け付けている。
今後は、味の向上や収穫量の増加に加えて、地域活性化、産学連携などを見据えて取り組みを進めていく。苦労した「発酵」については、「まだまだ開発の余地がある」(平塚社長)。実験や改良を続けていくため、収穫の年による味の変化を楽しむこともできるようになるという。「チョコレートファンの方たちが、毎年首を長くして待ってくれるような商品にしていきたい」と平塚社長は意気込む。16年かけて商品になった“東京産カカオ”は、これからまだまだ形を変えていきそうだ。
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