連載
カネがなければ諦めろ? “身の丈”に合わせる英語民間試験導入は廃止すべき理由:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/5 ページ)
萩生田文科相の「身の丈」発言も問題視された、大学入試への英語民間試験導入が延期になった。家庭の経済力による機会の格差が、学力、そして“生きる力”に直結する日本社会で、今回の制度導入は貧困世帯の子どもの命をないがしろにするようなものだ。
シングルマザー世帯の5割以上が貧困
そもそも、家庭の経済格差が教育格差につながっていることはさまざまな調査から明らかです。
先月公表された「第5回(2018)子育て世帯全国調査」でも、あらためてその深刻度合いが浮き彫りになりました。なんとシングルマザー世帯の貧困率は5割を超えており、13%の世帯が「ディープ・プア(可処分所得が貧困線の50%に満たない状況)」に陥っていたのです。
具体的な調査結果は以下の通りです。
所得
- 子育て世帯の平均税込収入は、母子世帯が299.9万円、父子世帯が623.5万円、ふたり親世帯が734.7万円。前回調査と比べて、ふたり親世帯の平均年収は上昇しているが、母子世帯の平均収入は約17万円減少
- 貧困線を下回っている世帯の割合は、母子世帯で51.4%、父子世帯で22.9%、ふたり世帯では5.9%
- ディープ・プア世帯の割合は、母子世帯が13.3%、父子世帯8.6%、ふたり親世帯0.5%
- ちなみに母子世帯の母親の就業年収の中央値は200万円
暮らし向き
- 暮らし向きが「大変苦しい」と回答した母子世帯の割合は、末子が「0〜5歳」層で21.4%に対し、「15〜17歳」層では29.4%と、8ポイント増加
- 母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど経済的困窮度が高いが、ふたり親世帯では、そういった傾向はなかった
- 金銭的援助について頼れる人が「誰もいない」世帯の割合は、母子世帯が51.5%、ふたり親世帯が39.9%
関連記事
- 「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。 - 月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。 - 繰り返される「のぞき見採用」 リクナビ問題に透ける新卒採用の“勘違い”
「リクナビ」の内定辞退率予測データを巡る問題が広がりを見せている。採用側のコミュニケーション能力が貧弱だと感じる事例が毎年のように繰り返されている。学生にとって「就職先を志願する」ことは重い。採用側の姿勢を見直すことが必要だ。 - “やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸
消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。 - 職場で見過ごされる“心の暴力” 教員暴行事件に見る、オトナ社会の異常さ
神戸市の小学校教師の問題が「いじめ事件」と報じられていることに違和感がある。これは暴行だ。このような大人の言動を見て子どもは育つ。子どものいじめ問題以前に、「パワハラ」という精神的暴力、“見て見ぬふり”の姿勢をどうにかしなければならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.