カネがなければ諦めろ? “身の丈”に合わせる英語民間試験導入は廃止すべき理由:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
萩生田文科相の「身の丈」発言も問題視された、大学入試への英語民間試験導入が延期になった。家庭の経済力による機会の格差が、学力、そして“生きる力”に直結する日本社会で、今回の制度導入は貧困世帯の子どもの命をないがしろにするようなものだ。
教育を受ける機会、仲間と学ぶ機会、友達と遊ぶ機会、知識を広げる機会、スポーツや余暇に関わる機会、家族の思い出を作る機会、親と接する機会……といった経験を積む中で、私たちは、80年以上の人生を生き抜く「リソース」を獲得します。
ところが、低所得世帯の子どもはそういった機会を経験できず、進学する機会、仕事に就く機会、結婚する機会など、「機会略奪のスパイラル」に入り込み、「貧困の連鎖」を拡大させる大きなリスクになります。
少々専門的な話になりますが、リソースは、専門用語ではGRRs(Generalized Resistance Resources=汎抵抗資源)と呼ばれ、世の中にあまねく存在するストレッサー(ストレスの原因)の回避、処理に役立つものを意味し、ウェルビーイング(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態)を高める役目を担っています。
「Generalize=普遍的」という単語が用いられる背景には、「ある特定のストレッサーにのみ有効なリソースではない」という意味合いと、「あらゆるストレッサーにあらがうための共通のリソース」という意味合いが込められている。平たく言い換えれば、「いくつもの豊富なリソースを持ち、首尾よく獲得していくことが重要」なのです。
リソースは、遺伝や免疫などといった生物学的なものに始まり、おカネ、体力、住居、衣類、食事、権力、地位、サービスの利用可能性、あるいは、知識や知性、知力。特に人間関係は重要なリソースで、社会や地域とのかかわり、友人・知人・家族などからのサポートも有力なリソースです。
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