GRのコペンとダイハツ・コペン:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
日本のスポーツカーの中で、おそらく実力が最も侮られているのはダイハツ・コペンではないか? 筆者は以前からそう思っている。出来上がった2代目コペンは、クローズドコースでゼロカウンタードリフトができるような見事なバランスだった。山道を気持ちよい速度で走っても、ステアリングのインフォメーションが豊富で楽しい。こういうクルマが侮られている内は、日本の自動車文化もまだまだだと思う。
難題を見事に全て解決したアイデア
そうやってダイハツのアイコンとなったコペンだが、このモデルチェンジは難しい。走りが良くて、丸くて可愛く、オープンでなくてはならない。走りのためにはボディ剛性がいるが、オープンにすればそこがキツくなる。それをカバーできるような都合の良いベースシャシーはもはやない。お尻が丸いボディは空力がひどいことになり、法定速度内でもリヤ荷重が抜けて直進安定性が落ちる場合がある。余談だが、2代目コペンと初代のリヤのリフトを比べると60%も向上している。2代目が凄いだけではなく、初代のリフトがいかにひどかったかということだ。
さて、3つの要素を全部備えたクルマを何とかして作れといわれても「無茶を言うな!」と言いたくなる。この状況を逆転して、モノコックを止めちまえと考えた人は、現代の一休さんだと思う。
どうせ流用できるシャシーが無いのなら、内骨格式のフレームでいこうというアイディアは強烈だ。まずそんなに数が出るはずのない軽のスポーツカーに、専用シャシーを起こそうと考えることがどうかしている。しかもモノコック全盛というか、特殊なクルマを除けばそれしかない時代に骨格式のフレームを作るという飛躍も凄い。
つまりはこういうことだ。開発費を回収するためには台数を売らなければならない。しかし、そんなに売れるはずがないクルマだ。となると、長く作るしかない。しかし外板が強度を受け持つモノコックでは、同じデザインのまま売らなければならない。
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