働き方改革で“消えた”残業代はどこへ? 真にやるべきことは「効率化」「コスト圧縮」ではない:利益成長する「生産性向上」のためにやるべきこと(1/4 ページ)
続々と進む「働き方改革」。2019年4月の関連法施行もあり、現場では効率化が進み残業時間も削減傾向にある。一方で、浮いた残業代はいったいどこへいっているのか。また、経営陣は人件費をどのように配分すればよいのか。企業アナリストの大関暁夫氏が解説する。
残業時間や有給休暇取得の義務化などを盛り込んだいわゆる「働き方改革関連法」が2019年4月にスタートし、半年以上が過ぎました。有給義務化など一部項目は対象が大企業限定でのスタートですが、20年4月からは中小企業へも範囲が拡大。日本企業の「働き方改革」は新たな時代に突入すると言っていいと思います。
政府がアベノミクスに掲げた「1億総活躍社会」実現に向けた行動施策として、「働き方改革」を声高に叫び始めたのが16年。関連法案の整備と並行して、政府から協力要請を受けた大企業は、改革へ具体的に取り組み始めました。企業がまず取り組んだのは、総労働時間の短縮で、すなわち残業時間の削減です。過労死に対する社会の注目も高まり、「そもそも日本人の労働時間が長すぎるのだ」という風潮に乗って残業時間の削減はいつしか最重要課題として取り上げられるようになりました。
結果はどうであったのかといえば、思いのほか順調に進んだと言っていいと思います。大手企業の大半では、「最終退社時間」を決め、それを徹底することでダラダラ行われる残業を撲滅したり、週1日、全社一斉のノー残業デーを実施して勤務にメリハリをつけたり、個人の残業時間の削減に対する姿勢を人事評価に反映したり――。業界を問わずさまざまな趣向を凝らし、ここ2年ほどで残業の削減に一定の成果を上げていると実感しています。
実は、残業時間の削減は、バブル経済崩壊により日本が低成長時代に移行する中で、これまでも何度か「コストカット」「経費削減」という旗印の下、声高に取り組みが押し進められた“古くて新しい”問題です。しかし、なかなか各社の取り組みは長続きするには至らず、多くの企業で悩みの種として残ってきました。そんな流れが一転、「働き方改革」として強力に押し進められている大きな理由は、なんと言っても今回「国の方針」という絶対的な後押しを得ているという強みがあるからです。
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